研究支援施設

研究チーム紹介

在宅療養支援方法の開発に関する研究

 

メンバー

リーダー:
研究部長  大渕修一
研究員:
増井幸恵、菊地和則、伊東美緒、河合恒
非常勤研究員:
解良武士

キーワード

介護保険、ケアマネジメント、高齢者虐待、超高齢者、心理的適応、認知症ケア、リハビリテーション、地域づくり

主な研究

「在宅療養支援方法の開発」に関する研究

研究紹介

 福祉と生活ケア研究チームの研究テーマの一つである「在宅療養支援方法の開発」は、高齢者に介護が必要になったり、認知症になったりしても住み慣れた地域での生活を続けていけるように、高齢者と家族の支援に役立つ対策や方法を明らかにすることを目指しています。これには、高齢者と家族への支援だけではなく、地域包括支援センターや行政といったサービス提供機関への支援、そして医療と介護だけでなく高齢者の権利擁護も含めて考えていく必要があります。従って、専門職・行政を主な対象とした研究から、本人・家族を主な対象とする研究まで、図に示す様な7つの柱を立てて取組を進めています。

 具体的には、地域包括支援センターの機能強化、虐待への区市町村の対応能力向上、超高齢者と家族介護者への心理的支援、認知症高齢者の安定した生活支援、高齢者が暮らしやすい町づくりや住環境改善に関する研究、さらには、高齢慢性疾患患者のリハビリテーションに関する研究などを通して、在宅療養環境の向上に取り組んでいます。
 このように本テーマでは在宅療養支援に関して包括的に取り組んでいますが、ここでは高齢者虐待と超高齢者と家族介護者への心理的支援に関する研究についてご紹介します。
 近年、児童虐待により子供が死亡したというニュースを聞くことが多くありますが、実は高齢者虐待も深刻な状況にあります。平成23年度の国の統計によると家族介護者などの養護者の虐待により死亡した高齢者は21人(心中を含む)であり、死亡には至らずとも虐待を受けた高齢者の数は16,599人にも達しています。

 高齢者虐待の深刻な現状に対処すべく、平成18年4月に「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」、通称、高齢者虐待防止法が施行されました。法律の施行に伴い高齢者虐待への対応に関する研究に取り組んできました。例えば、地域住民の皆さんが高齢者虐待の兆候を捉えて、事態が悪化する前に区市町村や地域包括支援センターなどに通報するためのチェックリストの開発(図参照)、都内の区市町村職員や地域包括支援センター専門職を対象とした高齢者虐待対応研修プログラムの研究開発などを行っています。チェックリストについては東京都が作成したパンフレットに掲載されています。もし該当する高齢者がいましたら、お住まいの地域の区市町村あるいは地域包括支援センターなどにご連絡ください。


(表をクリックするとpdfが開きます) 出典:東京都(2009)『高齢者虐待防止と権利擁護-いつまでも自分らしく安心して暮らし続けるために-』

 次に超高齢者と家族介護者への心理的支援に関する研究ですが、これは老年的超越に関する研究です。老年的超越とは、高齢期後半80歳代、90歳代に生じる心理的な変化のことを言います。このような心理的な変化は、身体機能の低下やソーシャルネットワークの縮小が生じやすい超高齢者の心理的適応と密接に関係していると考えられています。下の表は、日本における老年的超越の内容を示したものです。

 このような研究を行うことにより、超高齢者に適した支援のあり方、そして超高齢者を介護する家族への支援のあり方を明らかにしていく予定です。

主要文献

  1. 伊東美緒 : 福祉施設のアクティビティプログラム-やってみませんか?認知症高齢者のための「寄り道散歩」プログラム(1)特にアルツハイマー病の高齢者に適したアクティビティプログラム. 介護人材Q&A, 7(71), 67-69, 2010
  2. 伊東美緒 : 人生史を知ることから始まる認知症ケア~周辺症状への理解を深め、その方の思いに寄り添う~. ケアワーク, 199, 3-7, 2010
  3. 伊東美緒, 宮本真巳,高橋龍太郎:不同意メッセージへの気づき : 介護職員とのかかわりの中で出現する認知症の行動・心理症状の回避にむけたケア.老年看護学, 15(1), 5-12, 2011
  4. Ito M, Takahashi R, Liehr P: Heeding the behavioral message of elders with dementia in day care. Holistic Nursing Practice, 21: 12-18, 2007
  5. 大渕修一 : 介護予防事業の統括. 介護経営白書2010年度版‐10年目の真実と10年後の未来(ヘルスケア総合政策研究所編), pp.75-88,日本医療企画,東京,2010
  6. 大渕修一 : 介護予防とリハビリテーション. 総合リハビリテーション, 38 (9),813,2010
  7. 大渕修一、小島基永、三木明子、伊藤和彦、新井武志、辻一郎、大久保一郎、大原里子、杉山みち子、鈴木隆雄、曽根稔雅、安村誠司 : 介護予防対象者の運動器関連指標評価基準 介護予防ケアマネジメントのために. 日本公衆衛生雑誌, 57(11),988-995,2010
  8. 大渕修一、小島基永、 新井武志、 小島成実、柴喜崇、河合恒 : 膝痛軽減を目的とした運動器の機能向上プログラムの有効性.日本老年医学会雑誌,47 (6), 585-591, 2010
  9. Kimura, K., Obuchi, S., Arai, T., Nagasawa, H., Shiba, Y., Watanabe, S. and Kojima, M. : The influence of short-term strength training on health-related quality of life and executive cognitive function. Journal of Physiological Anthropology, 29, 95-101, 2010
  10. 菊地和則 : 平成21・22年度 科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究) 養介護施設従事者等による高齢者虐待への市町村の対応能力向上に関する研究報告書,東京都健康長寿医療センター研究所,東京, 2010
  11. 菊地和則、大塚理加、野中久美子、新開省二 : 第3回東京都内の地域包括支援センター実態調査報告書,東京都健康長寿医療センター研究所,東京,2011
  12. 菊地和則、国分正巳、崎山賢士、その他:養介護施設従事者等による高齢者虐待への市町村対応に関する調査研究.平成22年度老人保健健康増進等事業「養護者による高齢者対応の標準化のためのマニュアル策定並びに施設従事者による虐待対応の実態調査及び対応システムのあり方に関する研究」報告書(日本社会福祉士会),33-140,2011
  13. 大塚理加、菊地和則、野中久美子、高橋龍太郎: 介護支援専門員の高齢者虐待事例への対応プロセスとその促進・阻害要因に関する研究.社会福祉学,51(4),104-115, 2011
  14. 増井幸恵、権藤恭之、河合千恵子、呉田陽一、高山緑、中川威、高橋龍太郎、藺牟田洋美 : 心理的well-beingが高い虚弱超高齢者における老年的超越の特徴-新しく開発した日本版老年的超越質問紙を用いて-. 老年社会科学, 32(1), 33-47,2010
  15. 中川威、増井幸恵、呉田陽一、髙山緑、高橋龍太郎、権藤恭之 : 超高齢者の語りにみる生(life)の意味. 老年社会科学, 33, 422-433, 2011
  16. 増井幸恵、中川威、権藤恭之、小川まどか、石岡良子、立平起子、池邉一典、神出計、新井康通、高橋龍太郎:日本版老年的超越質問紙改訂版の妥当性および信頼性の検討.老年社会科学,(印刷中),2013

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