研究所からのお知らせ

  • 2016.12.7更新
「乳酸菌ラクトバチルス カゼイ シロタ株を含む乳製品の習慣的摂取が高齢者の高血圧発症リスクを低減」

 株式会社ヤクルト本社(社長 根岸孝成)と、東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チームの青栁幸利専門副部長が、群馬県吾妻郡中之条町(以下、中之条町)に在住の高齢者を対象に、乳酸菌ラクトバチルス カゼイ シロタ株(以下、L.カゼイ・シロタ株)を含む乳製品の摂取頻度と高血圧発症リスクを調査した結果、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の週3回以上の習慣的摂取は、高齢者の高血圧発症リスクの低下に繋がることが示唆されました。
 これまでの研究によって、L.カゼイ・シロタ株の熱水抽出物の摂取は高血圧者の血圧を低下させること、L.カゼイ・シロタ株の細胞壁成分(多糖-ペプチドグリカン複合体)が関与していることが明らかになっていました。今回の研究結果と合わせ、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の習慣的摂取が高血圧発症を予防する効果が期待されます。今後、更なる詳細なメカニズムの解明が期待されます。
 本研究成果は、科学雑誌「Beneficial Microbes」の電子版(12月1日付)に公開されました。

 

プレス発表資料

  • 2016.10.21更新
「ミトコンドリア病と特定できる画期的な診断方法を発見・開発」

 久留米大学医学部小児科学講座と東京都健康長寿医療センターの共同研究グループは、早期にミトコンドリア病と特定できる画期的な診断バイオマーカー「GDF15」を発見・開発しました。これにより、不要な検査を繰り返す必要がなくなるため、早期治療に道が開かれることになります。その研究成果は専門誌のNature Reviews Disease Primers(オンライン版)に掲載される予定です。
 ミトコンドリア病は、ヒトが生きるために必須のATP合成が十分できないことで、種々の臓器の症状(精神・運動発達遅滞や知的退行、心不全や腎不全、難聴や糖尿病)を引き起こす病気です。対象患者数は国内で約2000人、世界で約50万人とされます。臨床的には、発症年齢や症状、重症度もさまざまで、決定的な検査方法がなく、患者は不要な検査を繰り返すことになります。診断するまでに長い時間を要し、結果的に有効な治療法のタイミングも遅れ、病気が進行するという深刻な問題がありました。
 「GDF15」は、病気を特定できる感度・特異度が98%とほぼ100%に近く、従来型よりも20ポイントも高い世界で最も有用なミトコンドリア病の診断バイオマーカーです。病気の重症度、ひいては薬効評価にも有用であることが示され、本症診断の世界的な標準検査法となります。ミトコンドリア病と特定するための有用な診断バイオマーカーの開発は、世界のミトコンドリア病の臨床研究者の悲願であり、今後、世界中のミトコンドリア病の早期診断・早期治療が期待されます。
 本件は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業で採択されている研究により得られた成果です。

 

プレス発表資料

  • 2016.10.17更新
「筋ジストロフィー症の原因となる糖鎖構造を解明」

 東京都健康長寿医療センターの遠藤玉夫副所長、萬谷博研究副部長、理化学研究所の山口芳樹チームリーダーらの共同研究グループは、先天性筋ジストロフィー症の原因遺伝子(TMEM5)の機能を解明し、発症に関わる糖鎖の構造を明らかにしました。
 先天性筋ジストロフィー症は全身の筋力が低下する遺伝子疾患であり厚生労働省の難病に指定されています。私たちは以前に、糖鎖の異常を原因とするタイプの先天性筋ジストロフィー症を発見し、発症のメカニズムを調べてきました。これまでに18種の原因遺伝子中17種の機能が明らかになりましたが、これらの遺伝子が作る糖鎖の構造には未だ不明な部分があり、残る1種の原因遺伝子TMEM5の機能とこれにより作られる糖鎖構造の完全解明が期待されていました。
 今回、TMEM5がこれまで解明されていなかった部分の糖鎖をつくる糖転移酵素であることを明らかにしました。さらにTMEM5によりつくられる糖鎖の構造を詳細に解析し、先天性筋ジストロフィー症の発症に関わる糖鎖の完全な構造を明らかにしました。この糖鎖は脳と筋肉の発達や機能において重要な働きをしていると考えられています。本研究により、これまで部分的にしか分かっていなかった糖鎖の構造が完全に明らかになったことから、先天性筋ジストロフィー症の研究の飛躍的な進歩が期待されます。
 本研究は、米国生化学会誌「The Journal of Biological Chemistry」に掲載されるのに先立ち、オンライン版(10月12日付)に掲載されました。

 

プレス発表資料

  • 2016.8.5更新
「筋ジストロフィー症発症の新たな仕組みを発見」

 東京都健康長寿医療センター研究所の遠藤玉夫副所長、萬谷博研究副部長、高エネルギー加速器研究機構の加藤龍一准教授、桑原直之研究員らの共同研究グループは、先天性筋ジストロフィー症の一種である筋眼脳病の原因となるタンパク質の機能を解明し発症機構を明らかにしました。
 筋眼脳病は先天性筋ジストロフィー症の一種で、全身の筋力が低下する筋ジストロフィーに加えて脳の発達異常を伴うことを特徴とする重篤な遺伝子疾患です。日本に多いことで知られる福山型先天性筋ジストロフィー症と同じ症状を呈する類縁疾患であり、未だ病態には不明な点が多く根本的な治療法はありません。
 私たちは以前に、筋眼脳病の原因遺伝子POMGNT1を発見し、POMGNT1は糖鎖を作る“糖転移酵素”というタンパク質であり、遺伝子変異でPOMGNT1の酵素活性が失われて糖鎖を作れなくなることが発症要因となることを明らかにしています。しかし、筋眼脳病では、POMGNT1の酵素活性では作ることができない糖鎖も無くなることから、POMGNT1の機能を解明し、糖鎖異常と病態の関係を明らかにする必要がありました。
 今回、POMGNT1は糖転移酵素と糖結合の2つの機能を持つタンパク質であること、糖結合機能を使って作る糖鎖と、糖転移酵素機能を使って作る糖鎖は異なる構造であることが明らかになりました。
 本研究の成果は、同様の糖鎖異常を原因とする先天性筋ジストロフィー症の病態解明や診断・治療法の開発に活用されることが期待されます。

 

プレス発表資料

  • 2016.6.30更新
「加齢により神経筋接合部の分子構造が変化することを発見 -加齢による筋肉減少の機序解明が大きく前進-」

 東京都健康長寿医療センター研究所の重本和宏研究部長と米国カンザス大学医学部の西宗裕史准教授(東京都健康長寿医療センター海外研究員兼務)らの共同研究グループは、老化にともなう筋力低下や筋萎縮に伴い、運動神経と骨格筋のつなぎ目の神経筋接合部の分子構造が変化することを、STED(誘導放出制御)超解像度顕微鏡を使い明らかにしました。
 STED超高解像度顕微鏡を使った画像解析により、若いマウスのアクティブゾーンではBassoon蛋白を挟んでPiccolo蛋白がサンドイッチ様に配置しており、PQ-VGCC(カルシウムチャネル)蛋白はBassoon蛋白と共に局在することがわかりました。さらに、高齢マウスのアクティブゾーンではBassoon蛋白の発現が低下もしくは消失することや、さらにPQ-VGCC(カルシウムチャネル)も発現が低下することを明らかにしました。
 今回の研究成果により神経筋接合部のアクティブゾーンの分子構造が、加齢により変化することを世界で最初に発見しました。脳からの運動命令の神経伝達は脊髄の運動神経細胞を経て、神経筋接合部アクティブゾーンから骨格筋に伝わります。サルコペニアの予防や治療法を開発する際には、アクティブゾーンの分子構造の変化を指標として有効性を評価することができます。また、アクティブゾーンは脳内の中枢神経細胞の神経伝達部位にもあることから、今後、サルコペニアと認知症の因果関係を解明する重要な手がかりとなることも期待されます。

 

プレス発表資料

Copyright(C)東京都健康長寿医療センター All Rights Reserved.