診療科情報

トップページへ戻る>診療科情報>診療を支える部門>病理診断科>高齢者に多くみられる大腸髄様癌の病理診断

高齢者に多くみられる大腸髄様癌の病理診断

他の診療科を見る

大腸髄様癌とは?

大腸髄様癌はかつて低分化腺癌に含まれていましたが,特徴的な臨床病理像と特異な発生機序を示すことから独立した疾患として分類されるようになりました.WHO組織分類(第3版,2000年)ではmedullary carcinomaとして,我国の大腸癌取扱い規約第8版(2013年)では特殊型の一つとして記載されました.そのため,まだ十分認知度が高くありません.しかし髄様癌は,低分化にも関わらず比較的予後良好なこと,遺伝性大腸癌(Lynch症候群)にも発生することなどから,病理組織学的に確実に診断する必要があります。

▲このページのトップへ

臨床的特徴

  • 占居部位
    大腸髄様癌は盲腸,上行結腸,横行結腸に好発します。
  • 好発年齢
    若年者と高齢者に好発し,若年者の場合Lynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌hereditary non-polyposis colorectal cancer, HNPCC)の可能性が疑われます。
  • 頻度
    髄様癌の出現頻度は高齢者全大腸癌の2~3%であり,80歳以上の高齢者に発生する大腸低分化腺癌に限定すると約2/3は髄様癌です.80歳以上の女性患者の低分化腺癌はほぼ全例髄様癌です。
  • 症状・所見
    通常の大腸癌と差異はありません。
  • 予後
    比較的予後良好です.しかし,リンパ節転移を示すstage IIIになると通常の癌と変わりありません。
  • 治療
    外科的切除が一般的かつ標準な治療法です。

▲このページのトップへ

病理組織学的特徴

  • 膨張性発育
    肉眼的に通常の大腸癌と大差ありませんが,多くは膨張性発育を示します。
  • Tumor-infiltrating lymphocyte (TIL)とCrohn’s-like lymphoid reaction
    腫瘍内部あるいは辺縁部にリンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte,TIL)を主体とする炎症細胞浸潤が特徴的です(図1)。また,腫瘍 から少し離れた部位にリンパ濾胞様のリンパ球集簇巣(Crohn's-like lymphoid reaction)が散見されます(図2)。

図1 Tumor-infiltrating lymphocyte

図2 Crohn’s-like lymphoid reaction(矢印)
  • 腫瘍細胞の形態
    腫瘍細胞は比較的よくそろった類円形核と好酸性で比較的豊富な胞体を有します(図3).腫瘍は腺管形成に乏しく,索状・髄様増殖を示しますが,腫瘍表層・辺縁部に腺管形成部位を認めることも稀ではありません。

図3 腫瘍細胞の強拡大

図4 索状・髄様に増殖する髄様癌
  • 脈管侵襲
    リンパ管侵襲,静脈侵襲は中等度~高度にみられることが多い。
  • リンパ節転移
    60%の症例ではリンパ節転移はみられません.リンパ節に転移したとしても比較的軽度(個数は1~3個)です。
  • 進行度
    大部分の髄様癌は発見時に固有筋層を貫き漿膜下層に浸潤あるいは漿膜面に露出していますが,最近は早期に発見される症例も増加しています。

▲このページのトップへ

免疫組織学的所見

  • ミスマッチ修復遺伝子産物の発現減弱(図5)
    免疫染色でMLH1の発現が減弱します(図5a)。同時にPMS2の発現も減弱します(図5d).MSH2(図5b),MSH6(図5c)は陽性を示します.MLH1の発現は,MLH1遺伝子のプロモーター領域にメチル化が過剰に生じるため抑制されます.PMS2遺伝子に異常はみられませんが,PMS2はMLH1発現が減弱すると安定性が失われ,免疫染色で陰性となります。

図5 ミスマッチ修復遺伝子産物に対する免疫染色
腫瘍細胞核にMLH1(a)とPMS2(d)の発現減弱がみられる.
MLH2(b), MSH6(c)は腫瘍細胞核にびまん性に陽性を示す。
MLH1(a)とPMS2(d)の免疫染色標本では,間質の血管内皮細胞,リンパ球の核陽性像が散見されます。

  • 胃型粘液の発現
    粘液形質としては60~70%の症例で胃型粘液であるMUC5AC陽性を示します。


図6 MUC5ACの免疫染色像
腫瘍細胞の胞体にびまん性に陽性像がみられる。

  • 分子病理所見
    大部分の症例で高度マイクロサテライト不安定性を示し、MLH1遺伝子のプロモーター領域にメチル化が高率に検出されます.

鑑別疾患・鑑別点

  1. 通常の低分化腺癌
    髄様癌を除外することが重要です.発生部位,炎症細胞浸潤などの組織学的所見,MLH1免疫染色,マイクロサテライト不安定性からと鑑別が可能です.
  2. 内分泌細胞癌
    免疫染色により,内分泌細胞マーカーを検討することにより鑑別できます.
  3. Lynch症候群における髄様癌
    組織学的には同一ですが,発症年齢,家族歴,多重・重複癌の合併などの所見をもとにAmsterdam criteria II (日本では拾い上げを目的としたJapanesecriteriaが用いられる)を参考に診断します.最終的にはミスマッチ修復遺伝子(MLH1,MSH2など)の検索が必要となります.

▲このページのトップへ

髄様癌の病理診断のポイント

  1. 若年者・高齢者の右側結腸に発生した低分化腺癌は,髄様癌の鑑別が必須である.
    特に,80歳以上の高齢女性の右側結腸に発生した低分化腺癌は大部分髄様癌である.
  2. 組織学的に,リンパ球浸潤の目立つ低分化腺癌,腫瘍細胞核が類円形で比較的よく揃った低分化腺癌では髄様癌を疑う.
  3. 免疫染色で,MLH1陰性,PMS2陰性を確認する.
  4. マクロサテライト不安定性を確認する(一部の病院のみ対応可能).

▲このページのトップへ

参考文献

Arai T, Esaki Y, Sawabe M, Honma N, Nakamura K-I, Takubo K: Hypermethylation of hMLH1 promoter gene with absent hMLH1 expression in medullary-type poorly differentiated colorectal adenocarcinoma in the elderly. Mod Pathol 17: 172-179, 2004
新井冨生:Crohn’s-like lymphoid reaction. 病理と臨床 28 臨時増刊号: 148-149, 2010
新井冨生,櫻井うらら,沢辺元司,金澤伸郎,黒岩厚二郎,潮 靖子,本間尚子,相田順子,田久保海誉.髄様型大腸低分化腺癌の病理学的特徴.胃と腸 45: 1837-1846, 2010

現在、スタッフの情報はありません。

診療を支える部門

▲ページの先頭へ戻る
Copyright(C)東京都健康長寿医療センター All Rights Reserved.