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法人概要
中期目標

中期目標の基本的な考え方

 超高齢社会の到来により、今後、高齢者に対する医療への様々な需要は飛躍的な増大が見込まれ、高齢者には心身の特性に応じた負担の少ない医療、生活の質(QOL:Quality of Life。以下「QOL」という。)の維持・向上に資する医療の提供がますます必要となる。

 東京都には、高度・先端医療を提供する医療機関が集中しているが、加齢に対応する専門の医学・医療はいまだ確立されているとは言い難く、また、高齢者の特性に対応できる医師など医療従事者も不足している。このため、高齢者の特性に対応できる医療の確立や医療従事者の育成が急務である。
さらには、都内の要介護高齢者のおよそ半数は、何らかの介護及び支援を必要とする認知症の症状を持っているなど、認知症を有している高齢者に対する適切な医療の提供も課題である。

 こうした課題に対応していくために、高齢者に適切な医療を提供するための確固たる基盤を構築し、大都市東京にふさわしい高齢者医療を確立していかなければならない。

 また、高齢者医療の基盤づくりと確立のためには、高齢者医療と連携した基礎研究及び臨床研究の展開や、高齢者が健康で長寿を全うできるよう、疾病予防及び介護予防に関する研究も必要である。

 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(以下「センター」という。)は、高齢者専門の急性期病院である東京都老人医療センターと老化及び老年病に関する研究所である東京都老人総合研究所とを一体化し、地方独立行政法人化するものであり、地方独立行政法人化と両施設の一体化との利点を活かして、高齢者を取り巻く種々の課題の解決と、高齢者の健康増進、健康長寿の実現を目指すとともに、大都市東京にふさわしい高齢者医療の確立と発展、そして高齢者の健康の保持と疾病・介護予防の対応に寄与し、超高齢社会の都市モデルの創造の一翼を担うこととする。

 センターが、その役割を迅速かつ確実に実施していくために中期目標を策定し、センターに対しこれを指示する。
 特に、本中期目標期間である4年間については、以下の考えに基づき業務を行う。
 「高齢者のための高度専門医療及び研究の充実・発展と経営基盤の改善と確立」
 センターは、具体的取組を示す中期計画を自ら作成するとともに、その実績を検証しながら、不断の努力を重ねて、この中期目標の達成にまい進しなければならない。

1 中期目標の期間

中期目標の期間は、平成21年4月1日から平成25年3月31日までの4年間とする。

2 都民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項

(1) 高齢者の特性に配慮した医療の確立と提供
 今後、高齢者の増加に伴い、高齢者の医療ニーズは飛躍的に増大するとともに、高度・先端医療の提供についての要望も増大する。
 これらの医療ニーズに対応していくためには、これまでのノウハウや経験を活かすとともに、高齢者の特性に配慮した医療の確立を目指し、医療モデルの確立と普及、医療の標準化や治療法の開発を進める必要がある。センターは、この実現に向け、これまで培ってきた強みを強化し、高齢者医療の中心的課題である重点医療の実施、高齢者急性期医療の提供並びに地域連携モデルの確立に向けた地域連携の推進及び救急の充実を進める。

ア 3つの重点医療の提供
 我が国の高齢者の死亡原因の1位を占めるがん、死亡原因の2位、3位を占め、要介護状態の大きな要因となる心血管疾患や脳血管疾患などのいわゆる血管病及び都内の要介護高齢者のおよそ半数が有している認知症については、我が国の高齢者医療の大きな課題であり、適切な医療の確保は喫緊の要請である。
 センターは、こうした医療について重点医療として位置付け、医療と研究との一体化の利点を活かして、適切な医療を積極的に提供していく。
(ア) 血管病
 高齢者のQOL低下の大きな要因となる心血管疾患や脳血管疾患、生活習慣病などについて治療や予防医療の充実を図る。
(イ) 高齢者がん
 低侵襲医療の実施により、高齢者に負担の少ないがん治療を提供する。
また、在宅医療支援を積極的に進める。
(ウ) 認知症
 研究による最新の知見を活かし、認知症の早期発見及び診断、外来診療を中心とした適切な医療の提供並びに認知症予防への取組を進める。

イ 高齢者急性期医療の提供
 一般に、高齢者は複数疾患や慢性疾患により入院期間が長期化しやすいため、急変時に適切な急性期医療を受けることで、早期治癒が図られ、日常生活動作(ADL:Activity of Daily Living)の低下も防ぐことができる。
 このため、特に急性期の心血管疾患及び脳血管疾患などの疾病について、適切な医療の提供を行う。

ウ 地域連携の推進
 疾病の早期発見、早期治療に向け、これまでの地域連携の機能を強化し、地域連携クリニカルパス(地域内で、各医療機関が共有する各患者に対する治療開始から終了までの全体的な治療計画のことをいう。)の導入準備など、医療機関や福祉施設との医療連携を一層進めていく。
 また、地域の医療機関との役割分担を明確にし、紹介、返送及び逆紹介を促進するなど、地域医療機関との連携を強化する。
 さらに、地域の医療機関と情報交換や勉強会を実施するなど、連携医療機関の拡大に努める。

エ 救急医療の充実
 二次救急医療機関としての使命を果たし、都民が安心できる救急を目指して、救急医療体制を確保する。
 特に、時間外救急患者については、積極的な受入れを図っていく。

オ 安心かつ信頼できる質の高い医療の提供
 (ア) より質の高い医療の提供
 高齢者医療を提供する専門病院として、客観的な根拠に基づき、個々の患者に最適な医療を選択し、より質の高い医療を提供するため、科学的な根拠に基づく医療(EBM:Evidence based Medicine)を確立し発信する。
 また、高齢者の病態の特性に適合したクリニカルパス(入院から退院までの検査、処置及び看護ケア等の計画を時系列的に一覧にまとめ、患者に交付するものをいう。)の開発・導入促進など、医療の質の向上に取り組む。

(イ) 患者中心の医療の実践
 医療の中心は患者であるという認識の下、患者の権利を尊重する。
 また、患者が自ら受ける医療の内容に納得し、自分にあった治療法を選択出来るよう、十分な説明に基づくインフォームド・コンセント(医療従事者から十分な説明を聞き、患者が納得・同意して自分の治療法を選択することをいう。)を徹底すること。
 さらに、セカンドオピニオン(患者やその家族が、治療法等の判断に当たって、主治医とは別の専門医の意見を聴くことをいう。)の実施に努める。

(ウ) 法令及び行動規範の遵守
 医療法を始めとする関係法令を遵守することはもとより、行動規範と倫理を確立し、適正な病院運営を行う。
 個人情報保護及び情報公開に関しては、東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条例第113号)及び東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)に基づき、適切に対応する。
 また、カルテなどの個人情報の保護並びに患者及びその家族への情報開示を適切に行う。

(エ) 医療安全対策の徹底
 都民に信頼される良質な医療を提供するため、医療事故防止対策及び院内感染防止対策を確実に実施する。
 また、医療事故及び事故には至らなかった事例も含めて、報告の徹底と情報の収集及び分析に努め、医療安全対策の徹底を図る。
 さらに、高齢者の特性に配慮した安全な療養環境を整備し、事故を未然に防止するよう努める。

カ 患者サービスの一層の向上
(ア) 高齢者に優しいサービスの提供
 接遇面などにおいて、高齢者の立場に立った患者中心のサービスを提供する。
 また、運営面においては、受診手続、予約手続などにおける分かりやすさに配慮し、患者及び家族等の負担感の軽減を図るよう努める。

(イ) 療養環境の向上
 患者や来院者により快適な環境を提供するため、現行施設の中で可能な限り、院内環境の整備に努める。

(ウ) 患者の利便性と満足度の向上
 より患者の立場に近いボランティア等と協働して、患者サービス向上策の検討を行う。
 また、患者満足度調査を継続的に実施し、患者の声を病院運営に反映させ、患者の利便性の向上に取り組む。

(2) 高齢者の医療と介護を支える研究の推進
 センターは、医療と研究とを一体化することにより、高齢者疾患の病因及び病態を解明するための研究を推進し、その成果を新たな治療法や薬物の研究開発につなげることで、医療への応用を進めるとともに、臨床から提起された課題の解決に向けた研究も実施し、こうした研究を通じて、高齢者の心身の特性に応じた医療の提供を行う。
 また、疾病予防・介護予防対策の充実や社会参加の促進、又は健康の維持・増進に向けた研究を進め、高齢者の健康の増進及び健康長寿の実現を目指していく。
 これらの実現に向け、センターの研究部門は、重点医療に寄与する研究の実施や、老年学・老年医学研究の推進を通じて、高齢者の予防・医療・介護の諸課題に包括的に取り組み、臨床への実用化や社会還元を進める。

ア 老化メカニズムと制御に関する研究
 独創的な老化制御研究を推進し、科学的根拠に基づく健康長寿法の提案を目指して、加齢に伴う分子修飾(分子変化)と機能変化の解析や老化・老年病遺伝子の解明や応用を進める。

イ 重点医療に関する病因・病態・治療・予防の研究
 センターが実施する重点医療(血管病、高齢者がん、認知症)に関する予防法、診断法及び治療法の開発や病態解明に関する研究を行い、その結果得られた研究成果を臨床へ応用し、普及を図るなど、トランスレーショナルリサーチ(先端的医療の開発等における基礎研究の成果を臨床に応用するための研究のことをいう。)の確立に向けた研究を進める。

ウ 高齢者の健康長寿と福祉に関する研究
 社会貢献を促進させるプログラムの開発や老年症候群に対する包括的改善プログラムの確立と成果の普及など、高齢者の社会参加、健康増進、介護予防等の実現を目指して、プログラムの開発、医療部門と連携した臨床疫学的研究、地域モデルの構築などの研究を実施する。

エ 適正な研究評価体制の確立
 研究成果の都民への還元や都民ニーズの高い研究、成果の臨床への応用を積極的に進めるために、研究テーマの採択や研究結果の評価等について、外部評価を実施する。
また、その評価に基づき研究テーマの設定、研究継続の可否、適正な研究費の配分を実施する。

オ 他団体との連携や普及啓発活動の推進
(ア) 産・学・公の積極的な連携
 高齢者に対する医療の多様な課題や需要に対応するために、大学及び研究機関等との交流並びに学術団体及び業界団体の活動に積極的に参加することを通じて、大学及び民間企業等との連携強化に努め、新たな技術の実用化及び新薬の開発等を積極的に進める。

(イ) 普及啓発活動の推進や知的財産の活用
 研究成果について、学会発表等による情報提供や公開講座等の開催、各種広報媒体を活用した情報の提供など様々な方法を利用し、積極的に研究内容及び成果について発信及び提供を行う。
 また、研究の成果として得た新技術や技術的知見を実用化するため、優れた特許の出願と確保に努めるとともに、特許の使用許諾を促進する。

(3) 高齢者の医療と介護を支える専門人材の育成
高齢者は、老化に伴い身体面ばかりでなく、精神・心理面、生活機能面及び社会・環境面からの総合的な配慮が必要となる。
このため、高齢者の身体的・精神的老化に伴う様々な複数疾患の対応や予防医療を通じてQOLの維持・向上が図れるよう、医療と研究とが一体となった総合的な診療・治療や研究が出来る人材の育成を図っていく。

ア センター職員の人材育成
 センターの目指す医療を実現するために、必要な人材の確保に努め、老化に伴う様々な疾患の対応や予防医療に精通した医師、看護師及び医療技術員の育成を図る。また、老年学・老年医学をリードする研究者の育成を図る。

イ 次代を担う医療従事者及び研究者の育成
 臨床研修医や看護実習生等の積極的な受入れを図り、高齢者医療の専門知識を持つ人材の養成に貢献する。
連携大学院の学生を積極的に受け入れ、老年学・老年医学研究をリードする研究者の育成に貢献する。

ウ 人材育成カリキュラムの開発
 センター職員の人材育成を通じて高齢者医療や介護に関する人材育成のノウハウの蓄積を図り、その成果を人材育成カリキュラムとしてまとめていく。

3 業務運営の改善及び効率化に関する事項

(1) 効率的かつ効果的な業務運営
 センターが効率的かつ効果的な業務運営を実現するために、診療・研究体制の弾力的運用を図り、効果的な医療の提供、研究の推進を図るための体制を整備し、具体的な取組を進める。
 また、着実に経営基盤を確立できるよう、管理者の責務の明確化や職員一人ひとりの経営に係る意識を高めていくとともに、一層の意欲の向上が図れるよう、組織体制や人事・給与制度の整備、不断の見直しを図る。
この目標を達成するために、以下のような具体的な取組を進める。

ア 都民ニーズの変化に的確に対応した事業の実施と必要に応じた事業の見直し
イ 都民に納得の得られる業務・業績の適正な評価
ウ 個人の能力・業績を反映した給与制度の実施
エ 医療機器等の有効活用
オ 柔軟で機動的な予算執行
カ 経営に関する情報の管理、蓄積及び共用の促進

(2) 収入の確保及び費用の節減
 センターが地方独立行政法人制度の趣旨に則り、弾力的かつ効率的な運営を確保し、具体的な業務執行について法人の自律性を発揮していくためには、経営の安定化に向けて具体的な収入の確保及び費用の節減策を講じるとともに、コスト意識を高めていく必要がある。
 この目標を達成するために、以下のような具体的な取組を進める。

ア 診療単価や平均在院日数など他病院や他の研究機関とも比較可能な経営指標の活用による目標管理の徹底及び経営指標の継続的な改善
イ 適切な診療報酬の請求
ウ 競争的研究費や共同研究費等の外部研究資金の確保
エ 委託業務の仕様内容等の見直し並びに新たな委託内容の検討及び実施
オ 業務簡素化・合理化に伴う材料費見直し等の費用の節減

4 財務内容の改善に関する事項

 センターが事業を維持・発展させるためには自律的経営の実現に向け、財務内容の改善を図り、安定した経営基盤を確立していく必要がある。
 このため、「3 業務運営の改善及び効率化に関する事項」に記載した効率的・効果的な業務運営に向けた取組を実施し、例えば経常収支比率の向上に努めるなど、財務内容の改善に取組む。

5 その他業務運営に関する重要事項(新施設の整備に向けた取組)

(1) 新施設で実施する新たな取組への準備
 新施設の整備により、センターの基本姿勢を実現する機能を具備し、新たに可能となる取組を、円滑に実施するための準備を進める。

(2) 効率的な施設整備の実施
 平成24年度中の新施設完成を目指して、適正な管理体制の下、都と連携を密にし、センターにふさわしい施設内容にするとともに、将来的な財政負担も加味しながら、中長期的視点に立った効率的かつ効果的な建て替え手法の導入を図り、計画的な施設整備を行う。

(3) 周辺施設等への配慮
 センターは、新施設の整備に当たり、板橋キャンパス内の各施設を始め、周辺地域への環境にも十分配慮するように努める。
 また、周辺の関係機関等とも十分連携を図りつつ整備を図る。