加齢により神経筋接合部の分子構造が変化することを発見 -加齢による筋肉減少の機序解明が大きく前進-

東京都健康長寿医療センター研究所の重本和宏研究部長と米国カンザス大学医学部の西宗裕史准教授(東京都健康長寿医療センター海外研究員兼務)らの共同研究グループは、老化にともなう筋力低下や筋萎縮に伴い、運動神経と骨格筋のつなぎ目の神経筋接合部の分子構造が変化することを、STED(誘導放出制御)超解像度顕微鏡を使い明らかにしました。

STED超高解像度顕微鏡を使った画像解析により、若いマウスのアクティブゾーンではBassoon蛋白を挟んでPiccolo蛋白がサンドイッチ様に配置しており、PQ-VGCC(カルシウムチャネル)蛋白はBassoon蛋白と共に局在することがわかりました。さらに、高齢マウスのアクティブゾーンではBassoon蛋白の発現が低下もしくは消失することや、さらにPQ-VGCC(カルシウムチャネル)も発現が低下することを明らかにしました。

今回の研究成果により神経筋接合部のアクティブゾーンの分子構造が、加齢により変化することを世界で最初に発見しました。脳からの運動命令の神経伝達は脊髄の運動神経細胞を経て、神経筋接合部アクティブゾーンから骨格筋に伝わります。サルコペニアの予防や治療法を開発する際には、アクティブゾーンの分子構造の変化を指標として有効性を評価することができます。また、アクティブゾーンは脳内の中枢神経細胞の神経伝達部位にもあることから、今後、サルコペニアと認知症の因果関係を解明する重要な手がかりとなることも期待されます。

プレス発表資料