加齢により特定タイプの皮膚神経活動が低下することで、膀胱の収縮が抑制されにくくなることを発見

東京都健康長寿医療センター研究所の堀田晴美研究部長らの研究グループは、ローラーを使った軽微な皮膚刺激が、過活動膀胱による高齢者の夜間頻尿の緩和に効果があることを明らかにしてきました。今回、この皮膚刺激によって膀胱の活動を抑える効果が、老いたラットで弱くなっており、その原因が皮膚神経の働きの低下にあることをつきとめました。

実験では、若いラットと老いたラットを麻酔し、膀胱を膨らませて排尿時に引き起こされるような膀胱の収縮を誘発しました。皮膚神経を、電気刺激またはローラーで活性化しました。皮膚神経が電気刺激で活性化された場合には、膀胱の収縮は、若いラットと老いたラットで同じ様に抑えられました。これとは対照的に、ローラーで皮膚を刺激した場合には、老いたラットでは膀胱収縮を抑える効果が弱くなっていました。さらに、ローラー刺激中の皮膚神経の反応を調べたところ、老いたラットでは特定のタイプの皮膚神経の反応が著しく低下していることがわかりました。

以上の結果は、老化しても膀胱の排尿収縮を抑える自律神経のしくみは保たれているにもかかわらず、皮膚の刺激を伝える一部の神経の反応が低下するために、軽い皮膚刺激による抑制効果が弱くなることを示しています。この結果は、これまで不明であった高齢者の過活動膀胱の病因解明に新たな手がかりを提供するものと期待されます。

この研究成果は、平成30年2月27日にオープンアクセス神経科学ジャーナル Frontiers in Neuroscience にオンライン掲載されました。

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