脳動脈瘤

代表的な症状

  • 大多数の方は無症状です。
  • 視力障害や眼球運動障害(ものが二重にみえる)
  • 破裂すると突然の激しい頭痛、吐き気、意識障害など

疾患概要

脳動脈瘤は、脳の動脈が異常に膨らみ、血管の瘤が形成される病気です。
日本において、未破裂脳動脈瘤の有病率は約2 - 5%とされ、中高齢者や女性にやや多くみられます。
脳動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血を引き起こし、命に関わる可能性があります(図1)。

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図1:矢印部分:脳動脈瘤発生が多い箇所

未破裂の脳動脈瘤は多くの場合無症状で、他の病気の検査中に偶然発見されることも多くあります。
破裂した場合の致死率は約30%と高く、重度の後遺症が残ることもあるため、破裂後の早期治療が予後を左右します。

原因・症状

脳動脈瘤の主な原因には、動脈硬化、高血圧、喫煙、遺伝的要因などが挙げられますが決定的な要因は不明です。
脳の血管に強い圧力がかかることにより、動脈の壁が弱まり、動脈瘤が形成されると考えられています。
未破裂の場合、通常は症状がありませんが、動脈瘤が大きくなると周囲の神経や脳組織を圧迫し、頭痛や視力、視野の異常、ものが二重にみえるなどの症状がでることがあります。
破裂した場合には、突然の激しい頭痛(「雷鳴頭痛」)、嘔吐、意識障害、さらには昏睡状態に至ることがあります。

検査

脳動脈瘤の診断のために、画像検査を行います。
偶然発見されることが多く、MRIは脳動脈瘤の存在を評価するための一般的な検査です。
さらに、造影剤を使用したCT(CTアンギオグラフィー)やカテーテル検査(脳血管造影)により、詳細な血管の状態を把握します。
これらの検査により、動脈瘤のサイズ、形状、位置などを正確に評価し、治療方針を決定します。
ご家族に脳動脈瘤やくも膜下出血の方がいらっしゃれば積極的な脳MRIをおすすめします。

治療

脳動脈瘤は全ての方が治療適応となるわけではありません。
脳動脈瘤を指摘された方は一度受診されることをおすすめいたします。丁寧にご説明いたします。

脳動脈瘤の治療は、動脈瘤のサイズ、形状、位置、年齢や全身状態に応じて決定されます。
特に動脈瘤が大きい方、瘤の中に小さい瘤(ブレブ)が存在している方、家族歴がある方は治療対象となる可能性が高いです。
治療は外科的治療のみとなり、カテーテルでの治療(脳血管内治療)や開頭術が主に行われます。
未破裂の脳動脈瘤に対する治療の選択は、破裂リスクと治療リスクを慎重に比較検討して行われます。
破裂リスクが高いと判断された場合、積極的な外科的介入が推奨されます。

① 脳血管内治療(コイル塞栓術) (図2)
カテーテルの治療は、コイル塞栓術といって、カテーテルを使用して動脈瘤内にプラチナ製のコイルを充填し、動脈瘤内の血流を遮断する方法が主流です。ステントといって金属製の網目の細かい筒を動脈瘤のある血管に留置し、動脈瘤内を閉塞させる方法もあります。体にかかる負担は少ないとされています。未破裂動脈瘤に対しては、当院では多くは4, 5日程度の入院で対応しております。

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図2

② 開頭クリッピング術 (図3)
クリッピング術は、頭部に切開を置き、骨を外し(開頭)、手術を行う方法になります。顕微鏡を用いて動脈瘤を直接観察し、動脈瘤を金属製のクリップをはさむことで、血流を遮断します。頭部に傷がつくことになりますが確実に動脈瘤への血流を遮断することが可能で、複雑な形状をした瘤や、バイパス術を併用する難易度の高い手術もこの方法で対応しています。未破裂動脈瘤に対しては、通常は10日から14日程度の入院となります。

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図3

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