尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

代表的な症状

四肢の伸側面や腰背部などに、表面にカサカサした白い膜が付着する赤い斑が出現、次第に増えてきた。
また、手の爪表面に点状の陥没と先端部の爪の剥離もみられている。

疾患概要

炎症性角化症という皮膚の角化異常(スムースな皮膚表面が形成できなくなる)を伴う炎症性皮膚疾患の代表的な疾患です。
関節の腫れや痛みといった関節症状(乾癬性関節炎)が表れる場合もあります。

原因・症状

表皮細胞の増殖亢進を特徴とする炎症性角化症の代表的疾患ですが、根本的な発症原因は未だ明らかとはなっていません。
近年では、皮膚疾患というよりはメタボリック症候群(肥満、脂質異常、耐糖能異常など)と関係する全身性炎症の皮膚表現型疾患として特徴づけられることもあります。
臨床的特徴は角化不全による皮膚の形成不全の徴候、すなわち表面に鱗屑(白い膜)が固着した浸潤性(触れるとやや厚みがある)の紅斑(こうはん)として発症し、これが滴状や局面状の臨床像が表れることです(図1・2)。

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図1 滴状病変を主体とする尋常性乾癬

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図2 肘頭部の局面状の尋常性乾癬

患者さんがこれらの部位の痒みを訴える場合も少なくないです。
爪に病変が発症する場合は爪甲の点状陥凹(爪母障害)や爪甲剥離(爪床障害)などとして認められます。
皮膚の乾癬に類する炎症が関節に波及する病型は乾癬性関節炎や関節症性乾癬と称されますが、関節の付着部炎(筋肉が腱に移行していき、骨に付着している部分での炎症)を特徴とするために、手指・足指や肘・膝の関節のみならず、アキレス腱や足底腱膜あるいは脊椎関節に痛みや腫れといった関節炎症状がみられるのが特徴です。

乾癬の病態に関しては皮膚の何らかの抗原に反応して活性化した樹状細胞が、サイトカインのTNF-αやIL-12/IL-23 を分泌して、これがTリンパ球よりのIL-17 / IL-22 の 分泌を誘導して乾癬に特徴的な表皮細胞が増殖亢進した炎症性角化症が形成されると考えられています。

検査

確定診断のために、皮膚生検(病変部を局所麻酔下で5mm程度切り取り縫合)による病理組織検査を行うこともあります。
一般採血検査によりメタボリック症候群やリウマチ素因の有無を評価する場合もあり、これに加えて、治療で外用療法に加えて内服あるいは注射などの全身療法を行う症例では、副作用予防対策として結核や肝炎といった感染症の既往や潜在をスクリーニングするための血液検査や胸部X線あるいはCT検査を実施します。

治療

治療はビタミンD3外用薬/ステロイド外用薬の塗布、紫外線(ナローバンドなど)照射療法などが標準治療です。

全身療法では内服療法としてエトレチナート(ビタミンA誘導体)、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、デュクラバシチニブ(JAK阻害薬)があり、局所注射を行う生物学的製剤としてTNFα阻害薬、IL12/ IL-23阻害薬、IL-23阻害薬, IL-17阻害薬、IL-17受容体阻害薬等が現在当院で実施可能です。

各療法の実施に際しては、病変の重症度と治療薬の効果や副作用、あるいは患者さんが負担可能な医療費などを考慮して、個々の症例に最適な治療を選択しています。

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