第54話 断片化(その3)

断片化(その3)
 「介護サービスの断片化」

 「介護は北欧が一番」というのは、現在では昔話の類になったと思っていたら、介護の世界はそうでもない。
 2000年の介護保険導入前は、老人病院、老人ホームの2類型が主であったが、病院にも回復期リハビリテーションが加わり、亜急性期から介護につなぐ地域包括ケア病棟も登場した。
 施設系に老人保健施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅居宅系もグループホーム、小規模多機能居宅住宅が加わった。在宅訪問系も訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション通所系として、デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリ)宿泊系としてショートステイもある。
 多様なサービスは多様なニーズに十分応えるために重要であるが、これらの導入はほとんど西洋のモノマネである。
 そのため、サービス類型ごとに大御所と専門家、利益団体が形成され、断片化している。介護人材の確保、IT/AI導入も一致して、取り組む時期にきたと言える。専門家の中には「スウェーデンが一番、寝たきりはいない」と言って、本邦を貶める記事も見受けられた(今も散見)。笑止千万である。
 海外での視察では一番の弱点、とんでもないところは見せない。
 北欧では病院ベッドが内科系で80%削減され、「病院から在宅へ」の掛け声は医療費削減に貢献した。一方、肺炎になった患者は、一度は救急で抗生剤の点滴治療を受けられるが、二回目からは内服治療となり、手遅れで亡くなっていくのが現状である。北欧を礼賛する方は、すぐに日本を離れて現地の高齢者医療介護に老後を任せてはいかがであろうか?