第59話 長寿の俗説(その2)

長寿の俗説(その2)

 よく笑うほど寿命が延びる
  Yes? 笑わない人はよく笑う人の死亡リスク2倍 → 原因か結果か不明
  (Sakurada:Journal of Epidemiology, 2019)

 米国で実施した研究では、230人の野球選手の顔写真を分析して追跡調査したところ、満面の笑みを浮かべていた選手の平均寿命は79.9歳で、笑顔が全く見られなかった選手の平均寿命は72.9歳であり、その差が7歳もあり、世界に衝撃を与えました(Abel and Kruger:Psychol Sci. 2010 Apr;21(4):542-4)。 
 ところが、この結果の再現研究では(Psychol Sci. 2018 Jan;29(1):147-153.)、笑顔と寿命とに関連は見られませんでした。
 余談ですが、Abel and Krugerは大リーグプロ野球選手で、幸運なイニシャル(ACEやGOD)の選手は不吉なイニシャル(ASSやBAD)の選手に比べ13歳も長生きであると発表しましたが(Percept Mot Skills. 2007 Feb;104(1):179-82)、後により多くの調査で否定された過去を持っています(Percept Mot Skills. 2011 Feb;112(1):211-6)。

 笑いがストレスを軽減することは示されており(PLoS One. 2020 Jul 9;15(7))、フレイルなどストレスに弱い高齢者において、笑いが健康寿命に与える影響については、今後も調べていく価値がありそうです。