第61話 長寿の俗説(その4)

長寿の俗説(その4)

 白髪、禿頭、顔の皺は寿命に関係する
 No 男女とも寿命に無関係(P Schnohr: J Gerontol A Bio Sci Med Sci, 1998)

 白髪、禿頭、顔の皺は、男性において心筋梗塞のリスクを高める(1.4〜1.9倍)ことを12年間の観察研究で報告されています(P Schnohr:Am Heart J 1995)。さらに35年間の10,885人の前向きコホート研究で、禿頭、耳たぶの縦皺、瞼の黄色腫は、これらの外見状の変化が増えるほど、心筋梗塞が増える(1.57倍)ことが報告されました(M Christoffersen; Circulation 2014)。 
 循環器疾患は、西欧では死因の上位を占めることから、外見上の変化が寿命の短縮にも関連がある可能性が指摘されていましたが、P Schnohrらは、13,000人の集団で16年間の死亡との関連を調査したところ、男女合計では、白髪、禿頭、顔の皺は寿命に関連がありませんでした。
 しかし、男性においては、白髪がないグループは、19%死亡率が低いことがわかりました。
 また、女性で老人環(脂質代謝が変化し、コレステロールやリン脂質などが角膜に沈着するもの)があると25%死亡率が高まることがわかりました。
 若白髪は父母からの遺伝素因(p<0.001)ですが、鉄欠乏や、うつとも関連し、逆に単純ヘルペス感染や喫煙は若白髪を防ぐ方向に働いているようです( Katherine G;Int J Trichology 2019)。