東京都健康長寿医療センター(以下「センター」という。)では、毎年、事業内容及び運営方針に関することについて、学識経験者、東京都医師会、地区医師会、患者代表者、東京都職員、センター役職員等の委員で構成する「地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター運営協議会」(以下「運営協議会」という。)にて年1回審議しております。今年度は、令和3年10月26日(火)にセンター内会議室において実施いたしました。
センターの活動内容等を広く知っていただくため、今年度より、運営協議会で審議された事項やそれに対する委員からの意見についてホームページ上で公開いたします。
病院・研究所の協力のもと、PCR検査体制を独自に整備することで、三大重点医療や高齢者の救急医療に関して目標を達成するよう努力した。特に、急性大動脈スーパーネットワークに関しては、新型コロナの影響により他院が受け入れを制限する中、積極的に患者を受け入れ、前年度を大きく上回る受入実績となった。また、地域医療の推進において、昨年度7月より高齢診療科を開設し、老年症候群を主訴とする患者を積極的に受け入れていることに加え、地域医療機関との連携についても、紹介率、逆紹介率ともに前年度より増加している。
さらに、患者に寄り添う医療の実現のため、全国的に入院面会を全面禁止とする中、病院・研究所の協力による患者家族へのPCR検査体制を活用し、緩和ケアや緊急入院を中心とした面会の場を提供してきた。
自然科学系では、世界で初めてFGFR4の阻害により膵臓がんの増殖と浸潤を抑えることが可能であることを明らかにした。膵臓がんは5年生存率が他のがんより低い難治性のがんと言われているが、新たな膵臓がんの治療方法の実用化が期待されている。
また、社会科学系では、日本全国高齢者パネル調査の参加者のうち、訪問調査に協力した65歳以上の高齢者2,206名のデータを解析し、地域在住日本人高齢者のフレイル割合を明らかにした。
さらに、健康長寿イノベーションセンター(HAIC)では、公的研究費の応募推進により、外部資金の獲得金額が過去最高金額の更新に繋がった。
都の協力要請に基づき新型コロナ専用病床を確保したほか、地域の関係機関と連携を図ることで重症患者を積極的に受け入れ、ECMO治療等重症患者に対する医療を実施している。また、東京都の宿泊療養施設、ワクチンの大規模接種会場、酸素・医療提供ステーション並びに抗体カクテル療法を実施する施設等への医師、看護師、薬剤師の派遣を行うなど、公的医療機関としての役割を果たした。特に看護師については、各施設でリーダーシップを発揮し、施設の立ち上げや運営に深く携わった。
認知症未来社会創造センターでは、自治体、医療福祉、産業、アカデミアの有機的な共同作業を持続的に推進し、認知症のリスクを減らすとともに、理解を深め、暮らしやすい街を創り上げるということを目標としている。具体的な取組として、センターが保有するビッグデータのデータベース、バイオバンクの構築、血液等を用いた低コスト・低侵襲のバイオマーカーの開発・実用化等を進めており、研究を進めている。
フレイル予防センターでは、身体的なフレイルだけでなく、精神的・社会的なフレイルに対し、多面的な、包括的な対策が必要となることから、病院・研究所が一体となってフレイル対策に取り組んでいる。具体的な取組として、令和2年度よりフレイルサポート医、フレイルサポート栄養士の養成を開始しており、各関係機関と連携しながら取組を進めている。