なぜ「しゃべりながら歩く」能力が認知症発症に関連するのか? ―2重課題条件下で歩行速度が低下しやすい高齢者ほど嗅内野の萎縮が進んでいることを発見―

東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太研究員とカナダウエスタンオンタリオ大学医学部のManuel Montero-Odasso教授らの共同研究グループは、簡単な暗算などの認知的負荷がかかる課題を遂行しながら歩行(2重課題条件下での歩行)した際に、歩行速度が遅くなる高齢者ほど嗅内野の萎縮が進んでいることを明らかにしました。

最近、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: 以後MCI)と呼ばれる、認知症ではないが、認知機能が年齢相応よりも低下した状態にある高齢者(正常域の認知機能に戻る可能性もあるが、認知症に移行するリスクも高い高齢者)では、2重課題条件下での歩行時に歩行速度が顕著に遅くなる者ほど将来の認知症発症リスクが高いことをManuel Montero-Odasso教授らの研究チームが明らかにしました。しかしながら、その神経学的背景については明らかではありませんでした。そこで我々の研究チームではMCIの高齢者を対象に、2重課題歩行検査に加えて、脳構造を調べることができるMRI検査を行いました。この研究では、加齢に伴い早期に萎縮が始まり、特に認知症患者で特異的に萎縮が認められる「海馬」と「嗅内野」という脳部位(記憶を中心とした認知機能を司っていると考えられる脳部位)に着目して、2重課題歩行検査の成績との関連性を検討しました。その結果、2重課題歩行時に歩行速度が遅くなる高齢者ほど左側の嗅内野の容量が萎縮していることが明らかになりました(通常の歩行速度とは関連なし)。

この研究成果は、国際雑誌「Journal of Gerontology: Medical Sciences」オンライン版(5月15日付)に掲載されました。

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