大都市高齢者基盤研究

メンバー

リーダー 研究副部長 小林 江里香
研究員 村山 陽
非常勤研究員 岡本 翔平

キーワード

就労、ボランティア、家族、地域社会、ワーク・ライフ・バランス、世代間関係、次世代支援、健康、ウェルビーイング、地域住民調査

主な研究

  1. 高齢期のワーク・ライフ・バランス推進のための課題の明確化
  2. 世代間支援の実態と効果の解明

研究紹介

本テーマでは、地域住民の大規模調査データの収集や分析を行い、大都市の高齢者が、家族を含む社会とのつながりの中で抱える課題を、多面的かつ客観的に検討することで、社会の変化に即した政策提言を行うことを目指しています(平成30年度新設)。

1.高齢期のワーク・ライフ・バランス推進のための課題の明確化

少子高齢化が急速に進む中、高齢者の就労促進は重要な政策的課題であり、実際に、この10年間で60代の就業率は大きく上昇しました。働く高齢者の増加や、仕事からの引退年齢の上昇は、今後も進むと予想されます。しかし、高齢者に期待されている役割は、就労だけでなく、ボランティア、家事、孫の世話、介護など、地域・家庭内にも様々あり、趣味・学習活動や友人との交流を楽しみたい高齢者も多くいます。仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)をどのようにはかるかは、若い世代だけでなく、中高年世代にとっての課題にもなりつつあります。

就労参加は高齢者の生きがいや経済的安定を高めることが期待される一方、時間的に余裕のない高齢者が増えることで地域活動の担い手が不足したり、退職年齢の高齢化によって、引退後の生活の再構築が難しくなるのではという懸念もあります。特に、生活の場と労働の場が分かれる(職住分離)傾向にあり、近隣とのつながりが希薄な大都市では大きな問題です。

そこで、本テーマでは、まず、高齢者の就労参加(雇用延長や再就職)が地域活動への参加に与える影響について検証し、就労と地域活動を両立するために必要な方策を検討します。さらに、高齢期には、どのような活動にどの程度参加するのが健康維持やウェルビーイング(幸福感や生活満足度)にとって良いのかを、就労だけでなく、地域・家庭内活動とのバランスも考慮しながら明らかにします。

これらの課題に取り組むため、全国高齢者(60歳以上の無作為抽出標本)の長期縦断研究(調査ホームページ:http://www2.tmig.or.jp/jahead/)や、東京都内・近郊の市に居住する中・高年者を対象とした社会調査のデータ解析などを行います。

2.世代間支援の実態と効果の解明

家族の多様化や地域社会の変化は、世代間互助(世代間の助け合い)のあり方を大きく変えようとしています。本テーマでは、親族内・親族外(主に地域)における高齢者と次世代との関係についての基礎的なデータを蓄積し、世代間関係の実態を明らかにするとともに、高齢者の次世代への支援提供が、高齢者自身や地域社会にもたらす効果を検証します。本研究の成果は、世代間の互助・共助を推進する制度・政策が、実証的な裏付けに基づき、社会の変化に対応したものとなることに寄与する資料となることが期待されます。

  1. 親族内での世代間関係
    高齢者とその子どもや孫との間での支援の授受や、子どもとの同居・近居や関連要因について、前述の全国高齢者調査のデータなどを中心に分析を行います。「支援」については、時間やサービスを直接提供する支援(孫の世話、介護など)だけでなく、情緒的な支援(心配事を聴くなど)や経済的な支援も含めて検討し、高齢者が子どもに対して行った支援が、高齢者が子どもから受ける支援にどのような影響を与えるのかといった、互恵性に注目しています。
  2. 地域における世代間関係
    核家族化や近隣関係の希薄化が進む都市部では、母親の育児不安や孤立が問題となっていることから、特に注目しているのは高齢者による「地域の子育て支援」です。これには、子どもの安全・健全な成長のための支援(挨拶・声かけなど)や、親に対する情緒的支援(ねぎらう、相談にのるなど)、手段的支援(子どもを預かるなど)が含まれます。このような次世代支援行動や、高齢者と若い世代との交流の促進(抑制)要因となる、個人や地域の特徴を明らかにします。また、世代間交流・次世代支援が高齢者の心身の健康に与える効果やその個人差の問題、地域住民への効果についても検証していきます。
    地域における世代間関係の分析には、幅広い世代を対象とした多世代調査のデータを使用し、高齢者側だけでなく若い世代の側からの検討も行います。

過去3年間の主要文献

  1. 村山陽, 長谷部雅美, 山口淳, 高橋知也, 村山幸子, 藤原佳典:世代間援助における互恵性の検討,日本世代間交流学会誌, 7(1), 印刷中
  2. 村山陽, 山口淳, 山﨑幸子, 藤原佳典:高齢者における慢性型ストレッサーの特徴, Journal of Health Psychology Research, 31(1), 印刷中
  3. 村山陽: 地域における世代間交流の可能性と課題 (論壇), 老年社会科学,39(4), 460-466, 2018.
  4. 小林江里香:「長寿社会における中高年者の暮らし方の調査」-全国高齢者の健康と生活に関する長期縦断研究の裏側から-. 日本世論調査協会報「よろん」, 120号, 46-51, 2017.
  5. 小林江里香:高齢者の社会参加の動向-地域包括ケアにおける支援提供者としての役割に着目して. Geriatric Medicine, 55(2), 139-143, 2017.
  6. 村山陽: 子どもとふれ合うことによる高齢者の感情体験 (第7章) 草野篤子・溝邊和成・内田勇人・安永正史・山之口 俊子編 「世界標準としての世代間交流のこれから」三学出版. pp.220-233,2017.
  7. 村山陽,竹内瑠美, 山口淳,山上徹也, 金田利子, 多湖光宗, 藤原佳典:幼老複合施設における世代間交流の可能性と課題 (特集 世代間の葛藤と多世代共生), 老年社会科学,38(4), 427-436, 2017.
  8. 小林江里香: 高齢者の社会関係における世代的・時代的変化-全国高齢者の長期縦断研究から. 老年社会科学, 38(3), 337-344, 2016.
  9. 小林江里香,深谷太郎,原田謙,村山陽,高橋知也,藤原佳典:中高年者を対象とした地域の子育て支援行動尺度の開発. 日本公衆衛生雑誌, 63(3), 101-112, 2016.
  10. Kobayashi, E., Liang, J., Sugawara, I., Fukaya, T., Shinkai,S. & Akiyama, H.: Associations between social networks and life satisfaction among older Japanese: Does birth cohort make a difference? Psychology and Aging, 30(4), 952-966, 2015. http://dx.doi.org/10.1037/pag0000053
  11. 小林江里香, 深谷太郎:日本の高齢者における社会的孤立割合の変化と関連要因-1987年,1999年,2012年の全国調査の結果より.社会福祉学, 56(2),88-100, 2015.
  12. 小林江里香:日本の高齢者の社会参加は進んだか-高頻度参加層の拡大と非参加層の縮小の視点から.老年社会科学, 36(4), 423-432, 2015.
  13. 小林江里香:高齢者の社会関係・社会活動(基礎講座:老年心理学の最前線⑪).老年精神医学雑誌, 26(11), 1281-1290, 2015.
  14. 小林江里香:社会的孤立者ほど早く死ぬ?縦断調査から明らかになった社会関係の健康への影響(第8章;コラム) 数理社会学会監修, 筒井淳也・神林博史・長松奈美江・渡邉大輔・藤原翔編 「計量社会学入門:社会をデータで読む」世界思想社.  pp.194-195, 2015.
  15. 村山陽, 竹内瑠美, 須田誠, 小畠秀吾: 高齢の女子受刑者の特徴:境界性パーソナリティ障害傾向に注目して,応用老年学,19,82-89,2015