脊椎(背骨)が上下に潰れるように変形する骨折で、骨が弱くなった高齢者に非常に多いのが特徴です。
この骨折を起こすと腰や背中の痛みが生じ、日常生活に支障を来たすだけでなく、場合によっては寝たきりになります。
骨折の治療だけでなく、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の評価・治療が重要になります。
転倒(尻もち)が骨折の主な直接の原因になりますが、気づかない内に起きて痛みが軽いこともあるため、「いつのまにか骨折」という名称でも知られています。
このような骨折を起こす背景に、「骨粗鬆症」があります。骨粗鬆症とは、骨の強度が低下する病気です。脊椎は身体のあらゆる部位の中でも、骨粗鬆症に伴う骨折が最も起こりやすいと言われています。
骨折による腰・背中の痛みに加えて、下肢の痛み・しびれ・脱力といった神経の麻痺症状が現れることもあります。また、背骨が上下に潰れることで腰・背中が曲がってきます。
体幹装具(コルセット)(図1)を用いて骨折部を体外から固定する治療に、鎮痛剤やリハビリテーションを組み合わせて行います。
図1:コルセット
保存療法が無効な場合には手術治療を検討します。第一選択は「経皮的椎体形成術/BKP」という、骨折部に空間を作ってセメントを注入する方法で、ごく小さい傷しか残らない非常に低侵襲な手術です(図2)。ただし骨折の状態や症状によっては、金属スクリューなどのインプラントを併用する必要があります。
図2 術後のレントゲンです。骨セメントが充填されています。
また、高齢者でこの骨折を起こす患者さんは、ほぼ全員が骨粗鬆症の状態と言っても過言ではありません。骨折の治療と並行して、骨強度の評価と、必要に応じて薬物治療を行います。
骨折が起きる前に骨を丈夫にすることが重要です。
食事療法:カルシウムやビタミンDの摂取を心がけましょう。
運動療法:体幹や脚の筋肉を鍛えることで、転倒の予防にもなります。
薬物療法:骨粗鬆症と診断されている場合は、薬物治療が必要になることが多いです。