肺がん

代表的な症状

無症状:ただし、進行すると以下の症状が出現することがあります

  • 咳が長く続く
  • 痰に血が混じる
  • 胸の痛み
  • 息切れや呼吸困難

疾患概要

肺がんは、肺にできる悪性腫瘍で、初期の段階では無症状のことが多く、健康診断や定期検査の画像検査で偶然発見されることがあります。新たに肺がんと診断される方は年々増加しており、2020年には12万人(男性8万1千人、女性3万9千人)が肺がんと診断されています1)。肺がんは、症状がない段階でも進行している場合があるため、発見されれば手術を含めた治療が検討されます。早期発見と治療が重要であり、無症状の人でも定期的な健康診断が推奨されています。

原因

肺がんの主な原因は喫煙ですが、喫煙しない人でも大気汚染やアスベストなどの影響で発症することがあります。

症状

無症状の肺がんは、特に自覚できる症状がないため、健康診断の胸部X線やCTスキャンで発見されることが多いです。症状が出る場合は、長引く咳や痰に血が混じる、息切れ、胸の痛みなどが見られます。がんが進行すると、他の臓器に転移し、さらなる症状が現れることもあります。

検査

無症状でも肺がんが疑われる場合は、胸部X線やCTスキャンが最も一般的な検査です。これらの検査で肺に腫瘍が発見されると、診断のため気管支鏡検査や生検(組織を採取する検査)が行われ、がん細胞があるかどうか確認します。また、PET検査で、がんがどの程度広がっているか、転移があるかどうかも評価します。

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治療:手術・放射線治療・化学療法

手術:無症状であっても肺がんが疑われた場合は、がんの進行度に応じて診断を確定させるため、また治療のために手術が選択肢となることがあります。手術でがんを取り除ける段階であれば、治療効果が高く、第一選択肢として推奨されます。切除範囲はがんの進行度や心肺機能を考慮して肺葉切除・区域切除・部分切除が検討されます(図1)

図1 肺がんの手術(切除範囲)

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手術の方法:開胸手術、胸腔鏡下手術、ロボット支援下手術があります(図2 手術の創部)。がんの進行度などを考慮して手術方法は選択されます。

開胸下手術:胸を切開して、直接目で見ながら手術を行います。可能な限り広背筋等の筋肉を温存して手術を行います。

胸腔鏡下手術 - 4ポート(内視鏡手術):胸に数か所の小さな穴(当院では3cm1か所、1cm 3か所)を開け、そこから細長いカメラ(胸腔鏡)や器具を入れて手術を行います。

ロボット支援下手術(内視鏡手術):小さな穴を開ける点は胸腔鏡手術と同じですが(当院では3cm 1か所、1cm 4か所)、手術用ロボットを使い、医師が専用の操作台からロボットアームを動かして手術を行います。

図2 手術の創部

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放射線治療・化学療法:進行している場合や手術が種々の理由で難しい場合(他器官への浸潤、低肺機能など)は、放射線療法や化学療法が検討されます。また、肺がんの種類によっては分子標的薬や免疫療法など、新しい治療法も適用されることがあります。

術後の経過:術後は通常、1週間から10日前後で退院となり、多くの場合、術前と変わらない生活を送ることが可能です。追加治療として化学療法を行わない場合には、術後2年間は1~3か月ごとの通院が必要です。その後は通院間隔を半年~1年ごとに延ばし、最低5年間は継続的な通院が求められます。

高齢者の肺がん:手術の適応について、かつては高齢であることを理由に手術が適応外とされるケースもありました。しかし、当院では高齢者治療に病院全体で特化しており、術前に筋力や認知機能の評価を含めた全身状態の総合的な評価を実施しています。その結果をもとに、併存疾患を有する高齢者に対しても安全に手術を行うため、診療科を横断した協力体制のもと治療に取り組んでいます。

1) https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor1(閲覧日:2025年1月5日)

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