自立促進と精神保健研究チーム 認知症・精神保健研究の山下真里研究員が日本老年社会科学会 第67回大会「論文賞」を受賞しました。
絵本読み聞かせボランティアグループにおける活動負担感と関連要因~REPRINTS研究より
発表者:自立促進と精神保健研究チーム 認知症・精神保健テーマ 山下真里 研究員
共同発表者: 川窪貴代、山城大地、高橋知也、松永博子、相良友哉、藤田幸司、藤平杏子、小川将、鈴木宏幸、村山洋史、藤原佳典
本研究は、高齢者による絵本読み聞かせボランティア「REPRINTS®」に参加している約430名を対象に、活動に伴う「負担感」に着目し、その実態と関連要因を明らかにすることを目的としたものです。これまで高齢者のボランティア活動は、健康の維持や社会参加の促進といったポジティブな側面が強調されてきましたが、実際の活動現場では、体力的な限界や人間関係のストレス、生活との両立の難しさなど、さまざまな「負担感」が存在しています。
本研究では、こうした負担感をより多面的に捉えるため、量的・質的の両側面から分析を行う混合研究法を用いました。まず量的な分析では、精神的健康の状態や活動参加の動機が負担感の有無とどのように関係しているのかを検討しました。その結果、精神的健康が低い方や、周囲の勧めで活動を始めた方は、活動に対する負担感を抱きやすい傾向があることが明らかになりました。一方で、「余暇時間を有意義に使いたい」という動機で参加している方は、負担感が少ない傾向が見られました。
質的な分析では、活動中にどのようなことを負担に感じているのかについて、参加者の自由記述をもとに分析を行いました。その結果、体力の低下、活動に対する不安や緊張といった心理的負担、人間関係の調整の難しさや、グループ内での役割分担への不公平感など、具体的で多様な負担感が明らかとなりました。
こうした実践に根ざした視点や、活動継続に向けた支援のあり方を示した点が高く評価され、本研究は論文賞を受賞いたしました。なお、本研究で明らかとなった負担感は、必ずしも否定的に捉えるべきものではありません。むしろ、ある程度の困難を感じながらも活動を継続し、その過程を乗り越える中で得られる成長や達成感がある可能性も示唆されます。その一方で、どのような支援や環境が負担を乗り越える手助けとなるのかについては、今後の重要な検討課題といえます。
賞状
盾