自然科学系副所長

ishigami dr.jpg
自然科学系副所長 石神 昭人

 令和5年度より令和9年度までの5年間、東京都議会の承認を得た第四期中期計画(2023年~2027年)が進行します。自然科学系では、第四期中期計画期間に血管病、高齢者がん、認知症、高齢者糖尿病などの老年疾患の予防、早期発見、早期治療のため、発症・病態のメカニズムや老化機構の解明を進め、新規診断・治療法などの開発、臨床への応用を推進します。また、高齢者特有の臨床症状であるサルコペニア、フレイルなど老年症候群の克服に向け、その発症機序の解明と早期の診断方法、有効な予防・治療法の開発、臨床への応用を進め、高齢者の生活の質の向上を図ります。さらに、PET(陽電子放出断層撮影)を用いた認知症の新たな画像解析法や早期診断法の開発と応用に取り組むほか、国内外の治験に協力を行い、研究成果の社会還元を目指します。

 自然科学系は、老化機構研究チーム、老化制御研究チーム、老化脳神経科学研究チーム、加齢変容研究チーム、老年病理学研究チーム、神経画像研究チームの6つの研究チームから構成され、基礎老化学、老年医学、加齢医学、糖鎖生化学、蛋白質生化学、分子生物学、遺伝学、栄養学、神経科学、行動学、病理学、核医学、がん、AIなど、多様な専門分野を有する研究者がいます。加えて高齢者ブレインバンク、高齢者バイオリソースセンターなどの研究基盤推進事業により、国内外での高齢者研究や医療の発展にも貢献します。このように、様々な専門分野で先端的な研究を行なっている研究者が集い、多面的で複雑な老化メカニズムの解明や老化制御を実現するために日々研究に取り組んでいます。

 日本では超高齢社会を既に迎え、高齢者の心身が健康で地域での生活維持を可能にする老化研究の成果に、都民の皆様の期待が増々高まっています。自然科学系の役割として、最先端の研究成果を都民の医療へと還元する責務があります。自然科学系の専門分野は基礎研究から応用研究まで幅広く、センター内外の自然科学系と社会科学系の研究者、病院関係者、企業と共同で研究成果を社会貢献に結びつけるために学際的な研究を行なっています。老化や老年病のメカニズムは、生涯という長い時間の中で様々な遺伝因子や環境要因とそれに対する生体応答の複雑な相互作用の過程で生じます。老化や老年病の進行速度および程度には個人差が大きく、そのメカニズムを解明できれば科学的根拠が明確で画期的な治療法や早期診断・予防法を開発できます。また、アジアや欧米などの諸外国の研究者と交流して、高齢者の健康長寿を達成すべく研究成果を日本から世界へ広げて社会貢献を果たしてゆきます。