自然科学系副所長 重本 和宏
当研究所では、平成30年度から第三期中期計画(5年間)がスタートしました。自然科学系では、血管病、高齢者がん、認知症など高齢者に特有な疾患や、サルコペニア、フレイル等、老年病特有の臨床症状である老年症候群の克服に向けて研究を推進しています。自然科学系は6つの研究チームに分かれており、基礎老化学、老年医学、神経病理学、神経学、がん病理学、核医学、神経科学、分子生物学、糖鎖生化学、蛋白生化学など多様な専門分野を有する研究者で構成されています。加えて高齢者ブレインバンク、高齢者バイオリソースセンターなどの研究基盤推進事業により、センター内だけでなく日本の研究や医療の発展に貢献しています。このように、様々な専門分野で先端的な研究を行なっている研究者が研究所に集い、多面的で複雑な老化のメカニズムの解明と新技術の開発・応用を実現するために日々研究に取り組んでいます。
創設以来、当センターの病院は東京都の老人医療の中核的な役割を担ってきました。超高齢社会を既に迎え、高齢者の心身が健康で地域での生活維持を可能にする老化研究の成果に、都民の皆様の期待が増々高まっています。自然科学系の役割として、最先端の研究成果を都民の医療へと還元する責務があります。自然科学系の専門分野は基礎研究から応用研究まで幅広く、センター内外の自然科学系と社会科学系の研究者、病院関係者、介護施設と共同で研究成果を社会貢献に結びつけるために学際的な研究を行なっています。老化や老年病のメカニズムは、生涯という長い時間の中で様々な遺伝因子や環境要因とそれに対する生体応答の複雑な相互作用の過程で生じます。老化や老年病の進行速度および程度には個人差が大きく、そのメカニズムを解明することができれば科学的根拠が明確で画期的な治療法や早期診断・予防法を開発することができるでしょう。また、アジアや欧米等の諸外国の研究者と交流して、高齢者の健康長寿を達成すべく研究成果を日本から世界へ広げて社会貢献を果たしてゆきます。