社会参加とヘルシーエイジング研究チーム 大都市社会関係基盤研究 専門副部長の村山陽が第34回日本老年学会総会「日本老年学会総会 合同ポスター(老年社会科学会部門)最優秀演題賞」を受賞しました。

研究成果
2025年07月11日

社会参加とヘルシーエイジング研究チーム 大都市社会関係基盤研究テーマ 専門副部長の村山陽が、第34回日本老年学会総会「日本老年学会総会 合同ポスター(老年社会科学会部門)最優秀演題賞」を受賞しました。
日本老年学会を構成する7つの学会から、学会部門ごとに優秀演題賞4つ・最優秀演題賞1つが選定されます。

発表タイトル

単身中高年男性における将来への諦めは援助要請を阻害するのか?~交差遅延効果モデルによる縦断的検討~

発表者

演者 〇村山 陽,山崎 幸子,長谷部 雅美,小林 江里香

発表内容 

【問 題】
 孤立・困窮状態にある単身男性中高年者は他者に援助を求めることに消極的である傾向があり、そのため適切なサービス利用につながりにくいという問題が指摘されています。

【これまでの調査研究と目的】
 養護老人ホームAに措置入所した男性高齢者83人(入所前に単身世帯)を対象にした面接調査(1)や、単身者50-70代4000人を対象にした郵送調査(2)により、男性では経済状況が苦しいほど他者への不信(他者不信)とともに将来への諦め(将来諦め)が強まり、援助を求める気持ち(援助要請)が抑制されることが分かりました。また、身体的健康に問題ないが、経済状態の問題保有率が高く、社会関係も乏しい50-60代前半男性の存在が見出されました(3)。
 一方、➀将来諦め・他者不信が援助要請を抑制するのか、それとも援助要請の抑制が将来諦め・他者不信を高めるのか(影響の方向性)? や②社会関係の乏しさ(孤立状態)は将来諦め・他者不信にどのように影響するか?といった新たな疑問が生じました。
 そこで、交差遅延効果モデルを用いた縦断解析により単身中高年男性の援助要請と他者不信及び将来諦めはどのように影響し合うのか、さらに孤立状態はどのように影響するのかを検証しました。

【方 法】
 2023年3月(W1)に都内A区在住50-69歳5000人を無作為抽出し郵送調査を実施、2024年11月(W2)に同一対象者に追跡調査を実施しました。

【結果と考察】
 分析の結果、孤立状態(W1)が将来への諦め(W1)を高め、それにより援助要請(W2)が抑制されることが認められました。また、孤立状態(W1)が他者不信(W1)を強め、それにより将来への諦め(W2)が高まることも示されました。
 こうした結果から、単身中高年男性における自己完結的な循環(孤立状態-他者不信の高まり-将来諦めの高まり-援助要請抑制)を断ち切るために他者との関りの中で将来展望を促す支援の必要性が示唆されました。

【引用文献】
(1) Murayama Y, Yamazaki S, Hasebe M, et al. How single older men reach poverty and its relationship with help‐seeking preferences. Jpn Psychol Res. 2021;63(4):406-420.
(2) Murayama Y, Yamazaki S, Hasebe M et al. Psychological factors that suppress help-seeking among middle-aged and older adults living alone. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(17):10620.
(3) 小林江里香、村山陽、長谷部雅美、高橋知也、山口淳、山崎幸子. 都市部の中高年独居者における心身の健康,経済状態,社会関係上の問題による類型化と類型別特徴. 2023;64(1):61-74.


村山陽 専門副部長