2024年07月発行
《注目記事》
認知症未来社会創造センターと研究成果のご紹介
・認知症未来社会創造センターについて/認知症未来社会創造センター センター長 粟田主一
・健康長寿データバンクとバイオバンクの確立/バイオロジー研究部門 データベース担当 金井信雄・認知症未来社会創造センター 副センター長 バイオロジー研究部門 バイオバンク担当 石神明人
・バイオマーカーを用いた新たな診断技術の開発/バイオマーカー部門 副院長 岩田淳
《その他(PDFでお読みいただけます)》
・センター長交代について
・所内研究討論会レポート
・友の会交流会レポート
・科学技術週間参加行事レポート
・新入職員紹介
・科学研究費助成事業の採択状況
・第169回老年学・老年医学公開講座
・主なマスコミ報道/編集後記
東京都健康長寿医療センターでは、2020年に「自治体、医療福祉、産業、アカデミアの有機的な共同作業を持続的に推進し、認知症のリスクを減らし、理解を深め、暮らしやすい街を創り上げる」という大目標を掲げ、病院と研究所が協働で進める5か年プロジェクトとして認知症未来社会創造センターを発足させました。5つの研究部門から成り立つ本プロジェクトは、令和6年度が最終年度となります。
そこで研究所NEWSでは、夏号、秋号、冬号の3回にわたって、認知症未来社会創造センターの取組みを紹介する記事を連載することにいたしました。はじめに、プロジェクト全体の概要を説明いたします。続いて、主な研究成果や今後の展望をそれぞれの研究責任者が解説していきます。
認知症を早期発見・早期治療を促進していくには、認知症をはじめとする病気の原因を突き止める研究や、治療薬や治療方法の開発など様々な研究開発を進めていく必要があります。近年、人工知能(AI)等の新規技術の開発が活発化しつつありますが、そのような研究開発を当センターだけで行うことは難しく、民間企業・国の行政機関や地方自治体・他の大学や研究機関(いずれも海外を含みます。)と共に進めていく必要があります。一方、診療情報を用いた研究開発・商品化を企業等が行う場合、事前に患者さんの同意を得られず、研究開発が速やかに行えないケースが生じています。
こういった課題を解決していくために、認知症未来社会創造センターでは病院と研究所が一体となって、大都市東京での高齢者のビッグデータを収集・管理していくための「健康長寿データバンク」の構築を進めています。「健康長寿データバンク」では、当センターを受診する患者さんから取得した診療情報をデータバンクに蓄積しています。これらを国内外の研究機関や企業が、AIを始めとする新規技術を用いた広い範囲の医学研究及び医薬品・医療機器等の開発・商品化のために利活用しています。患者さんには、本計画についてご理解いただいたうえで、同意署名をいただきます。同意された患者さんの診療情報は個人を識別することができる記述等を削除・置換した上で、整理・分類して、データバンクに蓄積します。医学研究開発では、診療情報を利用し多面的な解析を行うため、多くの患者さんの協力が必要です。多くの患者さんの診療情報を集めてデータバンクを活発に利活用できるようにすると、より早く、よりよい医薬品・医療機器等の開発が進み、人々の健康や医療の発展に役立つことが期待されます。
健康長寿データバンクの取り組みに、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。