老化機構研究チームの赤阪啓子研究員が日本生化学会の英文誌「The Journal of Biochemistry」の2017年1月号(162巻1号)で発表した「Excess APP O-glycosylation by GalNAc-T6 decreases Aβ production」に対して、2018年度のJB論文賞が授与されました。この賞は本誌2017年に掲載された論文の中で、優れた評価を得た論文の著者に授与される賞です。今年度は5編の論文が受賞しました。
Excess APP O-glycosylation by GalNAc-T6 decreases Aβ production
(GalNac-T6によるAPPのO型糖鎖修飾はAβの産生を抑制する)
https://doi.org/10.1093/jb/mvw056
K. Akasaka-Manya, M. Kawamura, H. Tsumoto, Y. Saito, Y. Tachida, S. Kitazume, H. Hatsuta, Y. Miura, S. Hisanaga, S. Murayama, Y. Hashimoto, H. Manya, T. Endo
老化機構研究チーム分子機構研究 研究員 赤阪啓子、萬谷博
老化機構研究チームプロテオーム研究 研究員 津元裕樹、三浦ゆり
老年病理学研究チーム 神経病理学研究(高齢者ブレインバンク) 研究員 村山繁雄
所長代理 遠藤玉夫
アルツハイマー病の病理学的特徴である老人斑は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)より生じるアミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積により形成されます。生体のタンパク質の多くは糖鎖の修飾を受けますが、糖鎖はタンパク質の性質や分子間の相互作用に大きく影響します。本論文ではAβの産生と糖鎖の関係について調べるために、糖鎖修飾を仲介する糖転移酵素の発現をアルツハイマー病の脳で解析しました。また、糖転移酵素のうちGalNAc-T6がAPPの特定のアミノ酸を糖鎖修飾し、Aβ産生を減少させることが示されました。以上より、APP代謝における糖鎖の重要性が示唆されました。