平成30年度若手研究者表彰事業にて長寿科学賞を受賞

社会参加と地域保健研究チームの谷口優研究員が、平成30年度若手研究者表彰事業にて「長寿科学賞」を受賞しました。

発表タイトル

繰り返し測定データを用いた高齢期の心身機能および生活機能の加齢変化パターンの類型化とその意義

発表者

社会参加と地域保健研究チーム 研究員 谷口 優

発表内容

私たちは、これまでに繰り返し測定データを有する草津町研究[群馬県草津町で17年間(2001-2017年)実施してきた疫学研究]のデータに縦断的統計解析法を適用して、高齢期の心身機能や生活機能の加齢変化パターンを類型化するとともに、各パターンとのちの健康アウトカムとの関連性を明らかにしてきました。ここでは、高次生活機能に焦点を当てた研究をご紹介します。

高齢期の生活機能は、認知症や要介護状態を評価するための重要な健康指標です。Lawton, M.P.は、高齢者の生活機能について単純なものから複雑な活動までを含む7つの階層モデルを提唱しており、通常の加齢変化では高次の生活機能が基本的な機能よりも先に失われることが知られています。健康長寿の実現には、高次生活機能の維持が重要ですが、その加齢変化パターンは明らかではありませんでした。

そこで私たちは、草津町で17年間実施してきた疫学研究のデータを用いて、高次生活機能(老研式活動能力指標:Lawtonモデルの上位3つに相当)の加齢変化パターンと死亡リスク及び社会保障給付費との関連を明らかにしました。延べ約1万件のデータから、高次生活機能の加齢変化パターンは4つの群 (高群36.3%、中高群40,1%、中低群17.4%、低群6.1%)に類型化でき、低群になる程、総死亡リスク及び心血管疾患による死亡リスクが高まることを示しました。平均医療費(月当たり)は、高群、中高群、中低群で加齢に伴う上昇がみられた一方低群では低下を示し、平均介護費は、中低群及び低群で加齢に伴う上昇がみられました。本研究から、65歳時点で高次生活機能が既に低くその後直線的な低下を示す約6%の集団(低群)に加えて、65歳時点では高次生活機能に問題はみられないが65歳以降に直線的な機能低下がみられる約17%の集団(中低群)に対して生活機能の向上を図ることにより、平均余命の延伸並びに社会保障給付費の削減が期待できることを示しました。

関連論文

https://academic.oup.com/biomedgerontology/advance-article-abstract/doi/10.1093/gerona/gly024/4955181