<プレスリリース>骨格筋でのビタミンC不足は筋萎縮や身体能力の低下をもたらす

発表内容の概要

東京都健康長寿医療センターの石神昭人研究部長、船越智子技術員、谷津智史非常勤研究員、滝沢晶子連携大学院生らは東邦大学の永田喜三郎教授、首都大学東京の相垣敏郎教授、順天堂大学の町田修一教授らと共同で、骨格筋でのビタミンC不足は、筋萎縮や身体能力の低下をもたらすことを明らかにしました。この研究成果は、骨格筋におけるビタミンCの機能解明に大きく貢献するものと期待されます。本研究は、英国科学誌Natureの姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」誌(電子版)に2019年3月20日付けにて掲載されました。

研究の背景

標準的な男性や女性の骨格筋量は、体重の30~40%を占めます。骨格筋にはビタミンCが多く存在しており、ビタミンCの総量はとても多いです。私たちは、以前に東京都板橋区在住の70~84歳の高齢女性を対象とした横断調査により、血漿ビタミンC濃度の高い高齢者女性は、握力、開眼片足(片足で立っていられる時間)、通常歩行速度などの筋力や身体能力が高いことを報告しました(Saito et al, J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 67, 295, 2012)。しかし、逆に血漿ビタミンC濃度が低いと筋力や身体能力が低下するのかは、わかっていませんでした。

研究成果の概要

本研究では、ヒトと同様に体内でビタミンCを作れないビタミンC合成不全マウスを用いて、血漿や骨格筋のビタミンCが減少すると骨格筋にどのような影響があるかを詳細に調べました。すなわち、雌のビタミンC合成不全マウスをビタミンC投与群と非投与群の2群に分け、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、前脛骨筋、長趾伸筋などの骨格筋の筋重量を定期的に測定しました。その結果、ビタミンC不足期間が長くなると筋肉を構成する筋線維が細くなり、筋重量が減少し、再びビタミンCを与えると回復することがわかりました。また、筋力や自発的活動量などで評価した身体能力も同様にビタミンC不足期間が長くなると低下し、再びビタミンCを与えると回復しました。

研究の意義

本研究により、ビタミンC不足は、骨格筋の萎縮や身体能力の低下をもたらすことが明らかとなりました。また、ビタミンCの再投与により回復できることも明らかになりました。ビタミンCは手軽に摂取できる食品成分です。この研究成果は、筋肉でのビタミンCの機能解明に大きく貢献するものと期待されます。

掲載論文について

【掲載誌】

英国科学誌Natureの姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」誌(電子版)(2019年3月20日)

www.nature.com/articles/s41598-019-41229-7

【掲載論文の英文表題と著書およびその和訳】

Vitamin C deficiency causes muscle atrophy and a deterioration in physical performance
Shoko Takisawa, Tomoko Funakoshi, Tomofumi Yatsu, Kisaburo Nagata, Toshiro Aigaki, Shuichi Machida, and Akihito Ishigami * (*corresponding author)
ビタミンC不足は、筋萎縮や身体能力低下の原因となる
滝沢晶子、船越智子、谷津智史、永田喜三郎、相垣敏郎、町田修一、石神昭人* (*責任著者)

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