<プレスリリース>「虚弱高齢者のフレイル対策に遠赤外線低温サウナが有効」

発表内容の概要

 東京都健康長寿医療センターの高齢者健康増進センター原田和昌副院長、杉江正光医員らの研究グループは、「運動を行う事が困難な高齢者」のフレイル対策として遠赤外線低温サウナプログラムが有効であることを、(一社)日本健康寿命延伸協会との共同研究により明らかにしました。本研究は日本老年医学会が発行する英文誌「Geriatrics & Gerontology International」に8月9日オンラインにて発表されました1

研究の背景

近年、超高齢社会におけるフレイル対策の重要性が指摘されております。"フレイル"とは"虚弱"を意味し、その評価は「体重減少・握力低下・歩行速度低下・活動量低下・易疲労感」の5つの項目により行われます2。フレイル対策として、運動や栄養による予防の重要性が指摘されておりますが、高齢者には膝・腰の痛みや息切れなどの症状、更には、低体力が理由で運動を行う事が困難な方が多いのも実情です。フレイルは老年症候群の一部として知られ、加えて、フレイルと老年症候群は互いに悪循環を形成することが指摘されております3。老年症候群とは高齢期に見受けられる症状などの総称であり、代表的には誤嚥、尿漏れ、転倒・骨折、もの忘れ、寝たきり等が挙げられますが、めまいや難聴なども含まれます。我々は日々の高齢者診療に携わる中、慢性的な冷え・浮腫み・慢性的な痛み(膝や腰の痛み)・しびれ・息切れ・尿漏れ・便秘・食欲不振・不眠・皮疹などの高齢者が日常的に訴えられる老年症候群に注目しました。加えて、これまでの知見を踏まえ「遠赤外線低温サウナ」4によるプログラムが、高齢者が日常的に悩まれる老年症候群の程度を改善し、更には老年症候群とフレイルの悪循環を阻止することで、フレイルをも改善するのではと考え、遠赤外線低温サウナプログラムの開発を通して、老年症候群やフレイルへの効果・検証を行いました。

研究成果の概要

本研究は、病状や症状、低体力の為、運動を行う事が出来ないプレフレイル(フレイルの前段階)を含むフレイル高齢者を対象に行われました。週2回3カ月間に渡る遠赤外線低温サウナプログラム(15分間のサウナ浴と30分の安静保温)を実施し、老年症候群やフレイルの改善の有無を検証しました。結果、遠赤外線低温サウナプログラムは「運動を行うことが困難な高齢者」の、冷え・浮腫み・慢性的な痛み・息切れ・尿漏れ・皮疹といった老年症候群の程度を改善し、加えて、体重や歩行速度、活動量の改善を通してフレイルの程度を改善することも確認されました4

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研究の意義

本研究結果を踏まえ、遠赤外線低温サウナプログラムが、超高齢社会における「運動を行う事が困難な高齢者」の身近な老年症候群の一部の症状の改善やフレイル対策に活用できるものと期待されます。

1 https://doi.org/10.1111/ggi.14003.  2 BMJ Open 2015; 5: e008462.  3 J Am Geriatr Soc 2007; 55: 780- 791.  4 Jpn Med Assoc J 2009; 52: 191- 193.

掲載誌

Geriatrics & Gerontology International

論文タイトル:Effectiveness of a far‐infrared low‐temperature sauna program on geriatric syndrome and frailty in community‐dwelling older people.

プレス資料

(問い合わせ先)

東京都健康長寿医療センター

循環器内科/高齢者健康増進センター 
医員 杉江 正光

〒173-0015 東京都板橋区栄町35番2号

電話 03-3964-1141内線62243

Email:masamitsu_sugie@tmghig.jp