<プレスリリース>「日本人高齢者全体のフレイル割合は8.7%」

発表内容の概要

フレイル(Frailty)とは、「健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体機能や認知機能の低下がみられる状態」を指します。国や自治体は、健康寿命の延伸に向けフレイル予防に関する施策を打ち立てています。フレイル予防に関する施策を実施・評価するためには、そもそもどのくらいの人がフレイルに該当しているかを把握することが重要です。これまで、いくつかの研究で日本人の高齢者のフレイル該当者割合(以下、フレイル割合)が調べられています。しかし、どれも特定地域での調査であり、「日本人高齢者全体」のフレイル割合を把握することはできていませんでした。研究チームは、代表サンプルによる「全国高齢者パネル調査」のデータを用い、地域在住の日本人高齢者全体のフレイル割合を初めて明らかにしました。この成果は、国際誌Archives of Gerontology and Geriatricsに掲載されました。

研究目的

全国の地域在住日本人高齢者のフレイル割合を把握すること。

研究成果の概要

2012年に行われた全国高齢者パネル調査の参加者のうち、訪問調査に協力した65歳以上の高齢者2,206名のデータを解析しました。フレイルの把握は、世界で最も使用されているFriedらの指標を用いました。指標に含まれる5個の項目のうち、3個以上該当した場合に「フレイル」、1-2個の場合に「プレフレイル」(フレイルの前駆状態)、0個の場合に「健常」と判断します。回答者の性別、年齢の偏りを調整した上でフレイル割合を算出したところ、8.7%の人がフレイルに該当していました。この割合は、諸外国に比べると低いものです。なお、プレフレイルは40.8%、健常は50.5%でした。また、女性、高齢、社会経済的状態が低い、健康状態が悪いほど、フレイル割合は高い傾向がありました。地域ブロック別では、概ね、西日本で高く、東日本で低い「西高東低」の傾向がみられました(図1)。

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研究の意義

本邦で初めて地域在住日本人高齢者のフレイル割合を明らかにした点で大きな意義があります。フレイル予防に関する施策の評価、あるいはフレイルに関する学術研究のマイルストーン(基準値・目標値)になる知見です。また、性別、年齢、社会経済的状態といった個人特性に加え、地域ブロックによるフレイル割合の違いを「見える化」したことで、健康格差の是正の必要性をあらためて訴える研究といえます。

プレス資料

論文情報

Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, et al. National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Archives of Gerontology and Geriatrics, 2020.

(問い合わせ先)

東京都健康長寿医療センター研究所

社会参加と地域保健研究チーム・専門副部長 村山洋史

電話 03-3964-3241 内線4257

Email: murayama@tmig.or.jp