<プレスリリース>「コロナ禍では男性・高齢であるほど社会的孤立に陥りやすく、孤独感に深刻な影響:約3万人への全国調査にて判明」

発表内容の概要

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)予防のためには人との接触機会の減少は極めて重要ですが、それによって人とのつながりが失われ、社会的孤立(人との接触や交流が著しく少ない状態)に陥ることが懸念されています。
コロナ禍における社会的孤立対策を施すためには、まずはその実態を定量的に把握する必要があります。また同時に、コロナ禍での社会的孤立がどのような健康影響を持つかを知ることで、対策の優先度を決定しやすくなります。
研究チームは、15~79歳までの全国サンプルによるインターネット調査のデータを用い、コロナ流行前と流行中の社会的孤立状態の変化と精神的健康との関連を調べました。この成果は、国際誌International Journal of Environmental Research and Public Healthに掲載されました。

研究目的

日本人のコロナ流行前と流行中での社会的孤立の変化と、コロナ禍での社会的孤立と精神的健康との関連を明らかにすること。

研究成果の概要

2020年8~9月に実施したインターネット調査参加者28,000人中、不正回答が疑われた者を除く25,484人を解析しました。解析では、インターネット調査特有の回答者の偏りを取り除くため、回答に重み付けを行いました。
社会的孤立は、「a.別居の家族や親戚」「b.友人・知人」それぞれとの「i.対面交流」「ii.メッセージのやり取り」「iii.音声での通話」「iv.ビデオでの通話」の頻度を尋ね、これらの合計が週1回未満であることと定義しました。これらの頻度は、2020年1月(コロナ流行前)と8月(コロナ流行中;調査時点)の2時点について尋ねています。
社会的孤立者割合は、コロナ流行前は21.2%だったのが、コロナ流行中には27.9%であり、6.7ポイント増加していました。その程度は、男性であるほど、高齢であるほど大きいものでした(表)。また、教育歴や所得によって社会的孤立者割合の変化に違いは見られず、社会経済状態による格差はコロナ禍でも維持されていることが分かりました。精神的健康との関連では、「コロナ流行前から変わらず孤立していない者」に比べ、「コロナ禍で孤立した者」は孤独感が高く、コロナに対する恐怖感が強いことが分かりました。興味深いことに、「コロナ流行前から継続して孤立状態にある者」よりもその程度は強いものでした。

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研究の意義

 政府は、「孤立・孤独対策担当大臣」を設置し、孤立・孤独の問題に取り組む方針を示しています。本研究は、社会的孤立対策では、コロナ禍で孤立した人への支援が特に重要であり、どのような層で孤立化が深刻かを提示することができました
Murayama H, Okubo R, Tabuchi T. Increase in social isolation during the COVID-19 pandemic and its association with mental health: Findings from the JACSIS 2020 study. International Journal of Environmental Research and Public Health 2021; 18(16): 8238.

プレス資料

(問い合わせ先)

東京都健康長寿医療センター研究所

社会参加と地域保健研究チーム

研究副部長(テーマリーダー) 村山洋史

電話 03-6905-6781 

Email: murayama@tmig.or.jp