Top Cited Article in 2020-2021に選ばれました

社会参加と地域保健研究チーム(大都市高齢者基盤研究)の村山陽研究員らが2020年にGeriatrics & Gerontology International(GGI)に発表した論文" Chronic stressors, stress coping and depressive tendencies among older adults"が、当該雑誌で発表された論文の中で引用された回数が多かった論文としてTop Cited Article in 2020-2021に選ばれました。

論文

・掲載論文:Geriatrics & Gerontology International(GGI)
・タイトル:Chronic stressors, stress coping and depressive tendencies among older adults(邦訳:高齢者の慢性
 型ストレッサー、コーピングと抑うつに関する研究)
・著者:Yoh Murayama, Sachiko Yamazaki, Jun Yamaguchi, Masami Hasebe, Yoshinori Fujiwara.
・巻号、頁:20(4):297-303.
・URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ggi.13870

研究の概要

【目的】
 長く持続しやすいストレッサー(ストレスの要因になる刺激)は"慢性型ストレッサー"と呼ばれ、高齢期には疾患や社会的役割の喪失のような慢性型ストレッサーの影響を受けやすいことが指摘されています。そこで本研究では、高齢者の抱える慢性型ストレッサーとそのストレスコーピング(ストレッサーに対処する方法)を測定する尺度をそれぞれ作成し、これらがうつ状態とどのように関連するのか検討することを目的としました。

【方法】
・予備調査:65-79歳の男女16740人を対象にしたWeb調査および67-85歳の男女21人に対する面接調査を行い、高齢者
 用慢性型ストレッサー尺度および高齢者用慢性ストレスコーピング尺度を作成しました。
・本調査:埼玉県A市在住の70代の中から二段無作為抽出法により抽出した500人を対象に質問紙調査)を実施しました。
 予備調査で作成した尺度に加えて、抑うつ傾向の測定には高齢者用うつ尺度短縮版(GDS-S-J)を用いました。

結果の概要

 慢性的なストレッサーが複合的に重なる状態を多く経験している高齢者ほど、抑うつ傾向が高い可能性が明らかにされました(例えば、疾患や疼痛といった身体的なストレッサーとともに生活困窮や借金などの経済的なストレッサーを抱えている状況)。
 また、高齢者は慢性型ストレッサーに対して多様なストレスコーピングの方法(例えば、問題解決に向けて情報を集める、問題の捉え方を修正する、仕方がないと諦める、誰かに相談する)を選択して用いるものの、それが必ずしもストレスの軽減につながっていない場合があることも認められました。

研究の意義

 本研究は国内外を問わずこれまで十分に把握されてこなかった高齢期の慢性型ストレッサーと抑うつおよびコーピングとの関連を明らかにしたことに意義があり、今後の高齢者のストレス対策を考える上で有用な知見になることが期待されます。

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