<プレスリリース>身体活動・多様な食品摂取・社会交流:3つがそろうと介護予防効果は顕著に高まる

発表の概要

東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チームの藤原佳典 研究部長らの研究グループは、中高強度身体活動・多様な食品摂取・社会交流行動を組み合わせて実践するほど、要介護化(要支援・要介護状態の新規発生)リスクが大きく低減することを報告しました。
本研究成果は、国際誌「Journal of Epidemiology」にてオンライン出版されました。

研究の背景

これまで多くの研究で、高齢期の定期的な身体活動、多様な食品摂取、活発な社会交流は、それぞれ独立して介護予防に効果的であることが示されてきました。しかし、これらの健康行動を組み合わせて実践することによって、介護予防効果がどの程度高まるのかについては明らかになっていませんでした。そこで本研究では、高齢者の身体活動、多様な食品摂取、社会交流の実践が要介護化リスクに及ぼす累積的な影響とその集団寄与危険割合1を縦断分析によって検討しました。

研究成果の概要

東京都内の65-84歳の男女7822名(男性3966名、女性3856名、平均年齢73.6歳)を対象に、3.6年間の追跡研究をおこないました。質問紙によって、2016年時点の中高強度身体活動量(週150分以上)2、食品摂取多様性得点(3点以上)3、対面/非対面交流(週1回以上)それぞれの充足の有無を評価し、これらの充足数と3.6年間の新規要支援・要介護認定との関係を分析しました。
その結果、これら3つの健康行動の充足数が増えるほど、3.6年間の要介護化リスクが大きく低減するという量・反応関係が明示されました。具体的には、3つの健康行動をいずれも実践していない群と比較して、要介護化リスクは、いずれか2つ実践している群で35%、3つすべて実践している群で46%、それぞれ有意に低値を示しました(図1:左)。また、高齢者全員(3つすべての健康行動をすでに充足している者を除く)が3つすべての健康行動を充足した場合、その集団における3.6年間の要介護化は16%減少することが示唆されました(図1:右)。

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研究成果の意義

本研究結果から、地域における介護予防の取り組みとして、身体活動・多様な食品摂取・社会交流のうち、足りない行動要素を個人の生活習慣や高齢者の自主グループ活動等に付加することが有用である可能性が示されました。本知見をもとに、当研究チームでは、通いの場等の介護予防機能の強化を図る"ちょい足し"プログラムを体系化し、高齢者や自治体職員、専門職への研修を通して各地で普及・展開しています。
これらの研修で使用しているテキスト(フレイル予防スタートブック:図2)や"ちょい足し"プログラムの詳細については、当研究チームのホームページ(https://www.healthy-aging.tokyo/)でも公開しております。ご関心のある方はぜひご覧ください。

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用語解説

注1) 集団寄与危険割合:本研究では、身体活動・多様な食品摂取・社会交流の各基準を充足することで、集団の要介護化が何%減少するのかを表しています。

注2) 中高強度身体活動量:普通歩行以上の強度でのすべての活動量を指します。国際的なガイドラインでは、週に150分以上の中高強度身体活動をおこなうことが推奨されています。

注3) 食品摂取多様性得点:10食品群(魚介類、肉類、卵類、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜類、海藻類、いも類、果物類、油脂類)のうち、最近1週間でほぼ毎日食べた食品群を1点とし、その合計を10点満点で表します。当センターの「健康長寿新ガイドライン」による目標値は7点以上ですが、本研究のような自記式郵送調査では平均点が低くなる傾向にあります。そこで本研究では、解析対象者の中央値(3点)以上を充足と定義しています。目標値はあくまで7点以上ですのでご注意下さい。

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問い合わせ先

〒173-0015 東京都板橋区栄町35-2
東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム
主任研究員:清野諭  研究部長:藤原佳典
電話:03-3964-3241 内線4252 メール:seino@tmig.or.jp