<プレスリリース>「SNS上での交友関係が豊かでも、現実世界でそうとは限らない :中高年者へのインターネット調査」

発表内容の概要

 今や多くの日本人はSNSを日常的に使用しており、中高年者も例外ではありません。この傾向は、新型コロナウイルス感染症蔓延以降、急速に進みました。SNSでは、実際の知り合いかどうか関わらず、多くの人と気軽につながりを持てることが利点です。しかし、それが現実世界の交友関係にどう関係しているかは十分に明らかになっていません。
 村山洋史をはじめとする研究チームは、中高年層をターゲットにしたSNS会員に対するインターネット調査を行い、SNSの代表格であるフェイスブック(以下、FB)を介したつながりの実情を調べました。この成果は、国際誌Asia Pacific Journal of Public Healthに掲載されました。

研究目的

 FB上でのつながりと実際の社会的ネットワーク、 社会的サポートとの関連を明らかにすること。

研究成果の概要

 ㈱オースタンスが提供している中高年層を主ターゲットとしたSNS「趣味人倶楽部」の会員を対象に、2020年3-5月にインターネット調査を行いました。3,721件の回答が得られ、うち、性別と年齢に回答のある40歳以上で、FBアカウントを持つ2,320件を解析しました(男性68.8%;平均年齢67.6歳)。調査項目は、「1. FB上での友達数」「2. FB友達の中で実際に親密な付き合いをしてる人の数(社会的ネットワーク)」「3. FB友達の中で困った時に助けてくれそうな人の数(社会的サポート)」でした。
 「FB上での友達」の平均は96.3人で、そのうち、「実際に親密な付き合いをしている人」は8.4人、「困った時に助けてくれそうな人」は3.5人でした。相関を調べてみると、FB友達数が多いほど、その中で親密な付き合いをしている人の数も多い傾向がありました。しかし面白いことに、困った時にあなたを助けてくれそうな人についてみてみると、FB友達数500人までは友達数と困った時にあなたを助けてくれそうな人の数には相関がありますが、501人以上になると困った時にあなたを助けてくれそうな人の数は上がり止まっていました
 人との関係は、一度知り合いになったからといって、永続的につながれるわけではありません。ある程度の時間と労力を割いて、関係を定期的にメンテナンスしていく必要があります。本研究は、SNS上の友達が多くても、困った時に助けてくれるような実際に機能する相手は一部に限られてしまうということを示唆しています。

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研究の意義

SNSはつながりをつくるための強力なツールです。しかし、現実のつながりを補完する、あるいは既にある実際のつながりを強化する働きはあれど、現実のつながりを完全に代替できるものではないようです。オンラインでのつながりの良い面も悪い面も、そして限界もあるということを覚えておいた方が良いといえます。
Murayama H, Sugawara I. Can online relationships in social networking services supplement offline relationships during the COVID-19 pandemic? Asia Pacific Journal of Public Health 2022; 34(2-3): 282-285.

プレス資料

問い合わせ先

東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加と地域保健研究チーム
研究副部長(テーマリーダー) 村山洋史
電話 03-6905-6781 
Email: murayama@tmig.or.jp