日本老年社会科学会第64回大会においてポスター賞を受賞しました。(前期高齢者における老年的超越の4時点9年間の縦断変化 ―潜在成長曲線モデルによる軌跡の評価と脱落の影響の検討-)

日本老年社会科学会第64回大会において、福祉と生活ケア研究チーム研究員増井幸恵が、ポスター賞を受賞しました。

発表タイトル

前期高齢者における老年的超越の4時点9年間の縦断変化
―潜在成長曲線モデルによる軌跡の評価と脱落の影響の検討-

発表者

増井 幸恵(福祉と生活ケア研究チーム)

共同発表者:権藤恭之2)、中川威3)、小川まどか2)、春日彩花2)、安元佐織2)、吉田祐子1)、井藤佳恵1)、神出計2)、池邉一典2)、石崎達郎2)

1)東京都健康長寿医療センター研究所
2)大阪大学
3)国立長寿医療研究センター

受賞内容について

 「あるがままを受け入れることができる」、「自分よりも他者を重んじる」、「他者とのつながりの意識が強くなる」といった老年的超越という心理状態は、老年的超越は高齢期に発達すると仮定されているが、縦断デザインにより確認された研究はほとんどない。そこで、長期縦断研究SONIC研究の参加者データを用いて、前期高齢者の4時点9年間における老年的超越の縦断変化を検討した。
 分析対象者はSONIC研究に参加の前期高齢者1000人(初回時年齢70.1±.9歳)であった。これらの人達は2010年に初回調査に参加し、3~4年間隔で2019年までに最大で4回の調査に参加していた。このデータを用いて、4時点9年間の老年的超越の縦断変化を検討したところ、1回の調査につき平均1.46点、4回9年間で5.84点有意に上昇することが示された。また、縦断研究においては参加者の脱落の影響が問題となることが多い。そこで、本研究では、4回目調査の参加した者と不参加であった者に3時点目までの縦断変化を検討したところ、有意な違いはみられなかった。
 分析の結果、前期高齢者の老年的超越は70歳から79歳まで9年間で発達していくことが示された。これまでに老年的超越の発達を実証データで示した研究はほとんどなく、貴重な結果といえるだろう。なお、今回の分析結果では発達傾向の個人差も示されており、今後は大きく発達する人の要因を検討してきたい。

増井先生 受賞の様子等
老年社会増井受賞2.jpg  増井受賞ポスターと.jpg