第11回日本認知症予防学会学術集会において社会参加と地域保健研究チーム研究副部長村山洋史が、浦上賞を受賞しました。
浦上賞
認知機能低下と総死亡の関連は独居と希薄な社会的ネットワークによって修飾される: 孤立のパラドックス
社会参加と地域保健研究チーム 研究副部長 村山洋史
認知機能低下が死亡のリスクであることはよく知られていますが、その関連を修飾する要因の検討は十分ではありません。本研究は、65歳以上の高齢者約7.5万人を対象にした大規模なコホートデータを用い、認知機能低下と総死亡の関連の修飾要因を検討しました。結果、認知機能低下と総死亡の関連を修飾する要因として、「独居」と「希薄な社会的ネットワーク」が見出されました。しかし、同じ「孤立」した状況であるにも関わらず、その修飾効果は逆でした:社会的ネットワークが希薄な群では、そうでない群と比べ、認知機能低下と総死亡の関連は強い傾向でしたが、独居群では、同居群に比べ、認知機能低下と総死亡の関連が弱い傾向でした。つまり、周囲とつながれていない状況は、認知機能低下と相まって死亡リスクを高めていたものの、「生活の営み」という要素が加わると、同じ孤立でも独居は保護的に働いていたのです。認知機能低下がある独居者は、周囲からの支援をうまく受領したり、生活機能を高く維持していくことで、結果的に死亡率の低さにつながった可能性があります。認知症支援や予防の関わりには、孤立の種類を十分に考慮する必要があるといえます。
村山先生賞状とともに