<プレスリリース>「住民同士のつながりが強い都道府県ほど、子ども食堂の数が多い」

発表内容の概要

 子どもに低額あるいは無料で食事を提供する場として広がりをみせる「子ども食堂」は、今や経済的困難を抱える世帯への支援という意味のみならず、幅広い世代が集う場として地域に欠かせない存在になっています。直近の調査では、全国に6,000箇所以上設置されていると報告されていますが、都道府県によってその数には違いがみられます。「どういう地域なら子ども食堂が根付きやすいか」―--こうした疑問に取り組んだ研究は実はありません。
 村山洋史研究副部長らの研究チームは、地域の住民同士のつながりを意味する「ソーシャルキャピタル」に注目し、都道府県レベルのソーシャルキャピタルと人口10万人あたりの子ども食堂数との関連を調べました。この成果は、国際誌Asia Pacific Journal of Public Healthに掲載されました。

研究目的

 都道府県レベルのソーシャルキャピタルと人口10万人あたりの子ども食堂数の関連を明らかにすること。

研究成果の概要

 都道府県毎の子ども食堂数は、「NPO法人むすびえ」の調査結果(2020年)を用いました。都道府県毎の人口から10万人あたりの子ども食堂数を計算しています。
 都道府県毎のソーシャルキャピタルは、2020年8~9月に実施したインターネット調査(15~79歳の全国サンプル25,484名)のデータを使用し、「①地域の人々は、一般的に信頼できる(社会信頼)」「②地域の人々は、多くの場合、他の人の役に立とうとする(互酬性の規範)」「③政府は信頼できる(政府信頼)」「④近所付き合いの頻度(近隣ネットワーク)」「⑤ボランティア、スポーツ、趣味のグループへの参加(社会参加)」の5つで測定しました。①~③は「そう思う」、④は「週1回以上」、⑤は「いずれかに参加」と回答した人の割合を都道府県毎に算出しました。なお、インターネット調査特有の回答者の偏りを取り除くため、回答に重み付けをしています。
 都道府県毎の年少人口割合、所得レベル、年少人口10万人あたりの小学校数の影響を統計学的に取り除いても、互酬性の規範」「近隣ネットワーク」が豊かな都道府県ほど、人口10万人あたりの子ども食堂数が多いという結果でした。
 ソーシャルキャピタルが高い地域では、そこに住む人々の協調行動が活発といわれています。日本における子ども食堂の周知度や社会的意義の理解は既に高い状況です。しかし、子ども食堂の認知や意義の理解といった『意識』が、子ども食堂の設置・支援・見守りといった『行動』に移すことが出来ていたのは、ソーシャルキャピタルが高い都道府県であり、故に子ども食堂数が多かったと考察できます。

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研究の意義

 本研究は、子ども食堂の広がりには、地域のソーシャルキャピタルが重要な役割を持っていることを明らかにしました。子ども食堂に対する地域のニーズのみならず、その地域の土壌(住民同士のつながりなど)を適切に理解しておくことで、子ども食堂はさらなる展開が可能であることを示唆しています。

掲載論文

Murayama H, Kurotani K, Tabuchi T. Social Capital and the Spread of Children's Cafeterias (Kodomo Shokudo) in Japan: An Ecological Analysis. Asia Pacific Journal of Public Health. (印刷中)

プレス資料

(問い合わせ先)
東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加と地域保健研究チーム
研究副部長(テーマリーダー) 村山洋史
電話 03-6905-6781 
Email: murayama@tmig.or.jp