<プレスリリース>「多世代交流を促す地域づくりアプローチにより 地域全体のソーシャルキャピタルが改善」

発表内容の概要

 東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典研究部長の研究グループは、多世代交流を促す地域介入により、地域レベルでのソーシャルキャピタル(社会的信頼、互酬性の規範)の改善が認められたことを明らかにしました。この研究成果は、国際雑誌「BMC Public Health」オンライン版(9月24日付、筆頭著者:根本裕太)に掲載されました。

研究成果の概要

 地域共生社会の実現には、地域住民における世代を超えたつながりの構築が必要とされております。しかし、その具体的方策は確立されておりません。本研究では、地域全体での多世代交流を促す仕掛けにより、地域住民のつながりが強化されるのかを検討しました。
 
本研究では、2016年3月~2019年3月に、神奈川県川崎市多摩区で地域介入研究(通称)「中野島多世代つながり愛プロジェクト」を実施しました。多摩区の5地区のうち1地区を介入群、4地区を対照群に割り付けました。介入群には、協議体設置、住民ボランティア養成、多世代あいさつ運動、多世代交流の場を実施し(図1)、介入前後のソーシャルキャピタルの変化を比較しました。介入の効果評価のため、無作為抽出された住民を対象に、2016年9月と2018年11月に調査を実施しました。ソーシャルキャピタルについて、「社会的信頼」、「互酬性の規範」、「ソーシャルサポート」を評価しました。両調査に回答した2,518名(介入群:791名、対照群:1,727名)を解析の対象としました。

1.png

2.png

 多変量解析(潜在的に交絡することが予想される要因を調整した解析)の結果、介入群では社会的信頼(近隣の人は信頼できる)および互酬性の規範(多くの場合、近隣の人は他人の役に立とうとする)のスコアが、対照群と比較して有意に改善することが示されました。

研究成果の意義

 本研究の結果から、多世代交流を促す地域アプローチ(協議体の設置、住民ボランティアの養成、多世代あいさつ運動、多世代交流の場の開設)により、直接的に取組に参画していない住民までにも波及効果が見られ、地域まるごとの住民同士のつながりを構築・強化できる可能性が示唆されました。さらには、研究終了後も、地域団体と区が連携し活動を続けています。
 このように多世代交流による地域づくりの取組が、住民全体の意識変容に寄与した研究は、わが国ではこれまで皆無と言えます。本研究は、自治体における世代を超えたつながり構築を促す具体的方策を示すものであり、多世代による地域共生施策の推進の一助になるものと期待されます。本プロジェクト全体の詳細については以下のページでご確認いただくことが可能です(国立研究開発法人科学技術振興機構社会技術研究(RISTEX):https://www.jst.go.jp/ristex/i-gene/projects/h27/project_h27_4.html)。

掲載論文

国際科学雑誌「BMC Public Health」(オンライン版掲載 9月24日付)
Nemoto Y et al. Effects of intergenerational contact on social capital in community-dwelling adults aged 25-84 years: a non-randomized community-based intervention.
(多世代交流を促す地域介入策が25~84歳の地域住民のソーシャルキャピタルに与える影響)

プレス資料

(問い合わせ先)
〒173-0015 東京都板橋区栄町35-2
東京都健康長寿医療センター研究所・社会参加と地域保健研究チーム 藤原佳典 /同東京都介護予防フレイル予防推進支援センター 根本裕太
電話 03-3964-3241 内線4257 fujiwayo@tmig.or.jp/nemoto@tmig.or.jp