日本生化学会の「2022年度JB論文賞」を受賞しました。

 日本生化学会において、老化機構研究チーム 研究員 今江理恵子らが、2022年度JB論文賞を受賞しました。

内容

 2021年8月号(170巻2号)に掲載された「PCYT2 synthesizes CDP-glycerol in mammals and reduced PCYT2 enhances the expression of functionally glycosylated α-dystroglycan」が2022年度のJB論文賞を受賞しました。この賞は、2021年に日本生化学会の英文誌The Journal of Biochemistry誌に掲載された論文の中から授与される賞です。

発表タイトル

PCYT2 synthesizes CDP-glycerol in mammals and reduced PCYT2 enhances the expression of functionally glycosylated α-dystroglycan
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演者

老化機構研究チーム 分子機構研究 研究員 今江理恵子、研究副部長 萬谷博、シニアフェロー 遠藤玉夫
老化機構研究チーム プロテオーム研究 研究員 津元裕樹、研究副部長 三浦ゆり

発表内容

 α-ジストログリカン(α-DG)は神経や筋肉の形成や維持において重要な働きを持つタンパク質です。α-DGには多くの糖鎖が結合しており、糖鎖はα-DGの機能に重要な役割を果たします。近年、α-DGの糖鎖に「グリセロール-3-リン酸」が含まれる場合があり、この場合には糖鎖の正常な機能が失われることが分かりました。グリセロール-3-リン酸を含む糖鎖が作られる際、「CDP-グリセロール」という化合物が材料となりますが、これまでにCDP-グリセロールはバクテリアなどの下等生物でしか見出されておらず、哺乳動物の細胞内にCDP-グリセロールが存在するのかは分かっていませんでした。本論文では、ヒトやマウスの細胞内にもCDP-グリセロールが存在することを初めて発見しました。さらに、CDP-グリセロールの合成酵素としてPCYT2を同定し、哺乳動物においてグリセロール-3-リン酸とシチジン三リン酸(CTP)からCDP-グリセロールが合成されるという、新しい代謝経路を発見しました。これらの知見から、α-DG糖鎖の合成制御とその異常による疾患の病態や、グリセロール-3-リン酸を含む糖鎖の生理的役割についての理解が進むことが期待されます。

今江先生 賞状とともに
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