第23回日本認知症ケア学会大会にて石﨑賞を受賞しました。(小規模多機能事業所における認知症高齢者のエンドオブライフケア)

 第23回日本認知症ケア学会大会において、福祉と生活ケア研究チーム研究部長 井藤佳恵が、石﨑賞を受賞しました。

タイトル

小規模多機能事業所における認知症高齢者のエンドオブライフケア

受賞者

福祉と生活ケア研究チーム 研究部長 井藤佳恵

受賞研究の概要

 わが国では1951年には80%の人が家で死を迎えていましたが、1950年代以降、在宅死は減少の一途をたどり、変わって医療機関での看取りが増えていきました。ですが近年、医療機関以外の場所、とくに施設での看取りがわずかながら増加傾向にあります。そして、居宅介護支援事業所においても、看取りへの取り組みが始まっています。
 生活支援を提供しながら看取りの中心的役割も担うことになった介護職員は、認知症高齢者の看取りに向かってどのような準備をしているでしょうか。高齢者施設のなかでも、特別養護老人ホームにおける看取りの研究は数多くあり、また、近年では、看護小規模多機能型居宅介護事業所での看取りが注目されています。ですが、介護給付の枠組みのなかで生活支援を提供することを大きな使命として創設され、医療的ケアの比重は小さく設定された居宅介護支援事業所に勤務する介護職員の、看取りに対する態度は十分には明らかにされていません。
 そこで今回、規模多機能型居宅介護事業所の職員が、認知症高齢者の日常生活へのかかわりの中で、その人の看取りに向かって何を準備しているのか、明らかにすることを目的とした研究を行いました。
 その結果、施設の介護職員の、看取りに向かう準備は以下の3つのカテゴリーに類型化されました。

Ⅰ「私」のなかの課題:人に死が訪れることの受容
 「死を人生のステージとして再認識すること」「日常生活と看取りの連続性に気づくこと」

Ⅱ「私」と対象者の関係の課題:共感的関係の醸成
 ・「生活(life)の共有」「看取り(death and dying)の共有」

Ⅲ「私」と対象者と家族の関係の課題:三者の共同作業としての看取り
・「家族の準備状況を知ること」「家族とともに看取ること」

 介護職員は、「私」のなかの課題、すなわち人に死が訪れることの受容と、「私」と対象者の関係の課題、すなわち対象者との共感的関係の醸成を連関、連動させながら、看取りに向かっています。そして死に近づくにつれて「私」と対象者の二者関係を家族に広げることを試み、本人、家族、職員の三者の共同作業としての看取りに向かう準備をしていると考えられました。
 
 本研究の成果をパンフレットにまとめました。ぜひご覧ください。
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賞状
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