第23回日本認知症ケア学会大会にて石﨑賞を受賞しました。(認知症への気づき・相談が遅れたケースの質的分析:受診前支援の検討)

第23回日本認知症ケア学会大会において、認知症未来社会創造センター 研究員 山下真里が、石崎賞を受賞しました。

大会名

第23回日本認知症ケア学会大会

受賞

石崎賞

発表タイトル

認知症への気づき・相談が遅れたケースの質的分析:受診前支援の検討

発表者

認知症未来社会創造センター 研究員 山下真里
共同発表者:加藤真衣1)、根本留美1)、川上ひろみ1)、北村伸1)2)、山崎明子1)
1):日本医科大学街ぐるみ認知症相談センター
2):仁寿会中村病院

受賞内容について

 本研究は、日本医科大学街ぐるみ認知症相談センター(以下、認知症センター)との共同研究によって実施しました。認知症センターは、地域に開かれた無料のもの忘れ相談所で、受診を迷う段階(認知機能が比較的軽度)の利用者が多いのですが、中には既に認知症がかなり進行しているケースの利用も散見されます。本研究は、このような重症化してから利用する者の特徴を分析し、認知症への気づきや相談が遅れる要因について検討することを目的に実施しました。
 対象者は、認知症センター初回来所時にMMSEを実施した2712名で、9点以下を「重度群」とみなし、臨床心理士が記録した問診時の相談内容のカテゴリー化を行いました。結果、重度群は35名で、全員同伴者を有していたことから、受診や相談につながるためには、家族の役割や意向が大きいことが示唆されました。また、9割がかかりつけ医を有していたことから、受診前の支援はかかりつけ医と協力して実施することが不可欠と考えられます。さらに、専門医への受診歴が全くなかった者は19名いましたが、相談内容のカテゴリー化の結果、認知症が顕在化しなかった背景要因として、以下の3つのテーマが浮かび上がってきました。①問題だと感じる人の「不存在」、②認知症のことで困っているが相談につながらない「途絶」の問題、③問題として感じていない「認識」の問題。「①不存在」や「②途絶」の問題に対しては、家族や独居者を支える地域のサポートネットワークの構築や強化が、「③認識」の問題には、認知症に対する正しい理解の普及啓発だけではなく本人や家族の事情やニーズに応じたより個別的な対応が必要だと思われます。

 

賞状
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