令和4年度東京都医師会「医学研究賞」奨励賞を受賞しました。

令和4年度東京都医師会「医学研究賞」において、老化機構研究チーム 専門副部長 高山賢一が、奨励賞を受賞しました。

主催

東京都医師会

受賞名

令和4年度東京都医師会医学研究賞 奨励賞

発表タイトル

がん悪性化をもたらす転写因子群による相分離形成機構

発表者

老化機構研究チーム 専門副部長 高山賢一

受賞内容

 超高齢社会の到来とともにがん患者数は増加傾向です。治療法の進歩があった一方で治療抵抗性のがんに変貌し死に至ることが大きな課題となっています。発表者らは男性がかかるがん種として最も患者数が多く、健康長寿を損ねる前立腺がんに着目し、男性ホルモン作用を抑えるホルモン療法や抗がん剤を用いた化学療法に対して薬剤が効かなくなり、再発、難治化したがんの原因を調べました。そこで治療抵抗性になったがん組織において発現が上昇する転写因子(遺伝情報を読み解くタンパク質)の一つとしてOCT4という転写因子に着目しました。OCT4は前立腺がんを悪性化する男性ホルモン受容体であるアンドロゲン受容体(AR)やフォークヘッド型転写因子と言われる転写因子などと集合体を形成することを見出しました。さらにこれらの転写因子の集合体の形成を促す「相分離」という物理化学現象に着目し、OCT4がARの相分離を促進することで活性化を起こす仕組みを報告しました。かつウイルスの増殖を抑える核酸アナログと呼ばれる種類の薬剤であるリバビリンを用いることでこれらの集合体の形成を弱めることも見出されました。そのためリバビリンはOCT4が高く発現しているがんに対して抗がん剤の効きを良くする作用を持つことが示されています。本研究は抗がん剤が効かなくなったタイプのがんにおいてこのような転写因子の複合体形成が相分離により高まることで様々な遺伝子ネットワークの活性化が起きていることを見出し、相分離機構を標的とすることで新たな治療法を生み出す可能性を初めて示しました。

 

賞状
東京都医師会奨励賞 写真.png