<プレスリリース>血中アルブミン酸化還元バランスが 高齢者の低たんぱく質栄養状態の指標となる可能性

発表内容の概要

 高齢者は食欲の低下や食嗜好性の変化からたんぱく質・エネルギー欠乏状態に陥りやすく、これに伴いサルコペニアやフレイルといった疾病のリスクが高まります。栄養指標として広く用いられている血中アルブミンには「酸化型」と「還元型」があります。食事からのたんぱく質の摂取量が充足すると、血中アルブミンの還元型が増加し、酸化型が減少します。逆に不足すると、血中アルブミンの酸化型が増加し、還元型が減少します。近年、この血中アルブミン酸化還元バランスが血中アルブミン濃度と比較して、たんぱく質の栄養状態をより早期、かつ正確に示す栄養指標となりうることが基礎・臨床研究から明らかとなってきています。

 この度、森永乳業株式会社と共同研究を行い、当センターが実施するコホート調査「板橋健康長寿縦断研究」の健診に参加した地域在住高齢者1,011名のたんぱく質摂取量と血中アルブミン酸化還元バランスとの関連について検討しました。日本人の食事摂取基準 (2020年版) をもとに、65歳以上で推奨される一日当たりのたんぱく質摂取量を満たしているかどうかをたんぱく質不足の基準としました。その結果、血中アルブミン酸化還元バランスはたんぱく質摂取量と統計学的に有意な関係が認められました。一方、血中アルブミン濃度には有意な関係は認められませんでした。以上のことから、血中アルブミン酸化還元バランスは、高齢者のたんぱく質栄養状態を反映し、低たんぱく質栄養状態に伴うサルコペニアやフレイルといった疾病リスクの低減に寄与しうる指標となる可能性が示され、これらの研究成果を学術雑誌"Clinical Nutrition ESPEN"にて発表しました。


Motokawa et al., Clin Nutr ESPEN 2024より改変
【図:血中アルブミン酸化還元バランスとたんぱく質不足の関連性】

研究目的

血中アルブミン酸化還元バランスが高齢者の低たんぱく質栄養状態を予測する指標となるか検討すること。

研究成果の概要

 「板橋健康長寿縦断研究」の健診に参加した地域在住高齢者1,011名のたんぱく質摂取量と血中アルブミン酸化還元バランスとの関連について検討した結果、血中アルブミン酸化還元バランスはたんぱく質摂取量と統計学的に有意な関係が認められました。一方、血中アルブミン濃度には有意な関係は認められないという結果が得られました。

研究の意義

血中アルブミン酸化還元バランスは、高齢者のたんぱく質栄養状態を反映し、低たんぱく質栄養状態に伴うサルコペニアやフレイルといった疾病リスクの早期発見に寄与しうる可能性が示されました。

掲載誌

掲載誌:学術冊子"Clinical Nutrition ESPEN"
掲載年月日:2024年6月22日
 学術雑誌"Clinical Nutrition ESPEN"は、ヨーロッパ臨床栄養・代謝学会 (European Society for Clinical Nutrition and Metabolism (ESPEN)) が発行するオンラインジャーナルです。臨床栄養と代謝に関する最新の科学的知識を普及することを目的に、基礎研究から臨床試験、最新の栄養ガイドラインなど様々な報告を掲載しています。

発表内容

1)論文演題名
Serum albumin redox state as an indicator of dietary protein intake among community-dwelling older adults.
(DOI: https://doi.org/10.1016/j.clnesp.2024.06.028

2)著者名
Keiko Motokawa, Maki Shirobe, Masanori Iwasaki, Yasuaki Wada, Fuka Tabata, Kazuhiro Shigemoto, Yurie Mikami, Misato Hayakawa, Yosuke Osuka, Narumi Kojima, Hiroyuki Sasai, Hiroki Inagaki, Fumiko Miyamae, Tsuyoshi Okamura, Hirohiko Hirano, and Shuichi Awata

プレス資料

(問い合わせ先)

東京都健康長寿医療センター 研究所
自立促進と精神保健研究チーム 本川佳子 
電話 03-3964-1141 内線4213
Email: kmoto@tmig.or.jp