東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太研究員の研究グループは、独り好き志向および社会的孤立具合と精神的な健康との関連を検討し、どの世代でも独りでいることを好む人(独り好き志向の高い人)は精神的な健康度が低い傾向にあり、独りでいることが好きでも社会的孤立による精神的健康への悪影響は弱まらないことを明らかにしました。この研究成果は、国際雑誌「Journal of Affective Disorders」(8月12日付)に掲載されました。
これまでの研究から、「社会的孤立状態」(一致した定義は確立されていないが、ここでは社会的孤立を他者との接触頻度に基づく客観的な状態から定義し、主観的な状態である孤独感あるいは孤立感とは区別)が精神的健康度に悪影響を及ぼすことが分かっています。しかしながら、この影響が他者との関わり合いに関する嗜好性(他者と交流を好むか否か)の違いにより、どのように変化するかは明らかではありませんでした。
そこで関東に在住の9,000名(若年者[20-39歳]3,000名; 中年者[40-59歳]3,000名 高齢者[60-79歳]3,000名)を対象にインターネット調査を行い、独り好き志向性(Preference for Solitude Scaleという質問票で調査)、社会的孤立(同居家族以外との対面および非対面のコミュニケーション頻度が両者を合わせても週1回未満の者を社会的孤立と定義)、精神的な健康状態(ウェルビーイング、悩み・抑うつ傾向、主観的孤独感)の関連を調査しました。加えて、「他者との付き合いの煩わしさ」の程度を調査し、独り好き志向性と精神的健康状態との間に果たす役割を検討しました。
研究の結果、全世代を通じて以下の点が明らかとなりました。
本研究は一時点の関連性を調べた調査であり、因果関係を示す結果ではないため、解釈には注意が必要ですが、本研究から無条件に「独りでいることが好きだから社会的に孤立していても精神的には健康でいられる」とは言えないことが示されました。却って独り好きの傾向が強いと精神的健康度が低い傾向にあることがあることが分かりました。これは、「独りが好き」が「人付き合いの煩わしさ」から生じている可能性が高いためであることも本研究から示唆されました。以上から、こころの健康の面から見ると、「独り好き」として対人問題を正当化することは、あまり良い影響はないのかもしれません。
国際科学雑誌「Journal of Affective Disorders」(現地時間8月12日)
Preference for solitude paradox: The psychological influence of social isolation despite preference (独り好きのパラドックス:社会的孤立との精神的影響)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165032724012345
桜井良太
(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム 研究員)
桜井政成
(立命館大学 政策科学部 教授)
鈴木宏幸
(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム 研究副部長)
藤原佳典
(東京都健康長寿医療センター研究所 副所長)
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