<プレスリリース>高齢者の健康づくりを高齢者の仕事に!「 シルバー人材センターが仕事としてフレイル予防を担う」 事業モデルの普及可能性を確認

2025.4.18

発表内容の概要

 東京都健康長寿医療センター研究所社会参加とヘルシーエイジング研究チームの村山洋史研究副部長らの研究グループは、2018年より埼玉県シルバー人材センター連合本部(いきいき埼玉)と協働して、シルバー人材センターの会員が仕事として対価を得ながらフレイル予防教室の運営を担う」という事業モデル(図1)を埼玉県内に普及するための実践研究を行ってきました。
 埼玉県内の全58のシルバー人材センターを対象に同モデルを事業化するための取組を5年間行い、評価した結果、広がりや継続性の面から同モデルの普及可能性が確認されました本研究成果は、国内紙「日本公衆衛生雑誌」にて掲載されました。
                   図 事業モデルのイメージ図

研究目的

 当研究チームでは、「運動、栄養、社会参加」がフレイルの予防・改善に向けた有効な手段の一つであることを明確化し、それらに働きかける複合的な予防プログラムの開発・効果検証を行ってきました。さらに、これらの研究成果を社会実装すべく、兵庫県養父市にて行政等と協働し、「研修を受けたシルバー人材センターの会員が仕事としてフレイル予防教室を運営する」という仕組みをつくり、教室を全行政区に設置する取組を行ってきました。
 養父市では約7割の行政区に教室が広がり、教室参加者では要介護リスクが半減するなど、同モデルの有用性が示されています。しかし、養父市での取組は行政の企画にシルバー人材センターが協力する形でスタートし、行政からの委託費やサポートがある中での実施であったため、他自治体のシルバー人材センターにおいても同様に事業化され、採算がとれる形で実施可能か否か、すなわち同モデルの普及可能性については検討の余地が残されていました。そこで、埼玉県シルバー人材センター連合本部と共同して同モデルの普及に取り組み、その広がりを評価しました。

研究成果の概要

 教室の事業化を促すため、埼玉県シルバー人材センター連合本部が実施主体となり、県内全58のシルバー人材センターに対し、①運動・栄養・社会面に働きかける教室プログラム・教材の提供、②フレイル予防サポーター養成研修(全3/年)、③事業に関する情報交換会(1回)、④事業実施に関する相談支援を行いました。その結果、59%のセンターが事業実施に至り、40%のセンターがフレイル予防サポーターへ対価が支払われる形で事業を実施しました。また、事業を実施したシルバー人材センターのうち、75%のセンターが2年以上事業を継続しました。これらの実績は、広がりや継続性という面で、「非専門家であるシルバー人材センターの会員が仕事として教室運営を担う」という同モデルの普及可能性を示唆しています。

図2 事業実施に至ったシルバー人材センター数(累積)の推移

研究の意義

 本研究により、研究グループが構築してきた「シルバー人材センターの会員が仕事として対価を得ながらフレイル予防教室の運営を担う」という事業モデルの普及可能性が示されました。同モデルは、地域におけるフレイル予防の担い手が増える、高齢者にとって魅力のある就業機会の創出につながる等の波及効果が期待できるモデルです。今後は、他地域への更なる普及を目指します。

掲載論文

雑誌名:日本公衆衛生雑誌
論文タイトル:「高齢者が仕事として担うフレイル予防教室運営」の普及可能性と課題:埼玉県シルバー人材センター連合本部の取組
著者:野藤悠、新開省二、大須賀洋祐、清野諭、成田美紀、野中久美子、横山友里、萩原静江、藤倉とし枝、藤原佳典、村山洋史
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/advpub/0/advpub_24-069/_article/-char/ja/

プレス概要

(問い合わせ先)

東京都健康長寿医療センター
社会参加とヘルシーエイジング研究チーム 野藤 悠
電話 03-3964-1141 内線4253 Email: nofuji@tmig.or.jp