<プレスリリース>アルツハイマー病の原因物質を除去するミクログリアの新規活性化機構を発見――GPR34受容体の刺激がアミロイドβの貪食を促進――

概要 

 東京大学大学院薬学系研究科の惠谷隼学部学生(研究当時)、高鳥翔助教、富田泰輔教授らの研究グループは、慶應義塾大学、新潟大学、東京都健康長寿医療センター、名古屋市立大学、理化学研究所、東北大学との共同研究により、脳内免疫細胞であるミクログリア(注1)に特異的に発現するGタンパク質共役型受容体GPR34を活性化することで、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ(注2)線維の貪食が促進されることを発見しました。
 本研究では、GPR34の特異的アゴニスト(注3)化合物M1を用いて、ミクログリアによるアミロイドβ線維の貪食が選択的に促進されることを実証しました。また、アルツハイマー病モデルマウスへの投与実験と、日本人アルツハイマー病患者脳組織の解析から、GPR34がアミロイドβ除去に重要な役割を果たしており、病態形成に関与している可能性を示しました。本研究成果は、GPR34を標的とした新規治療法の開発に貢献することが期待されます。
 本研究成果は、2025年11月20日付けで国際学術誌「Alzheimer's Research & Therapy」電子版に掲載されます。


詳しくは、以下東京大学大学院 薬学系研究科・薬学部のホームページをご参照ください。
 URL : https://www.f.u-tokyo.ac.jp/topics.html?key=1763600447

(注1)ミクログリア
 中枢神経系に存在する免疫細胞。脳内の異物や死細胞を貪食・除去する機能を持つ。アルツハイマー病においては、脳内に蓄積したアミロイドβを貪食・分解する重要な役割を担っている。

(注2)アミロイドβ
 アルツハイマー病患者の脳に蓄積する異常タンパク質。前駆体タンパク質APPがプロテアーゼにより切断されて産生される。脳内で凝集し、老人斑と呼ばれる構造物を形成する。アミロイドβの蓄積がアルツハイマー病の病態の中心にあると考えられている。

(注3)アゴニスト
 受容体に結合してその機能を活性化する化合物のこと。本研究で用いたM1は、リゾリン脂質受容体であるGPR34に特異的に結合し、その機能を活性化するアゴニスト化合物である。