<プレスリリース>後期高齢者の質問票と基本チェックリストの併用により将来の要介護認定リスクが特に高い者を抽出可能

2026.2.12 

発表のポイント

後期高齢者の質問票によるフレイル疑いの有無と基本チェックリストによる二次予防事業対象の有無の組み合わせが、要介護認定の新規発生と関連するかを検討しました。

フレイル疑いあり/二次予防事業あり群では、フレイル疑いなし/二次予防事業なし群と比較して、新規要介護認定のリスクが2.55倍高いことが示されました。

後期高齢者健診で「後期高齢者の質問票」によりフレイル疑いと判定された者に対して「基本チェックリスト」を追加で実施することにより、新規要介護認定の発生リスクが特に高い後期高齢者をより効果的に抽出できることが期待されます。

発表内容の概要

 福祉と生活ケア研究チーム(医療・介護システム研究)と自立促進と精神保健研究チーム(認知症・精神保健研究)は、後期高齢者健診で一般的に用いられる"後期高齢者の質問票"と二次介護予防事業の対象者抽出に用いられる"基本チェックリスト"の両者に回答した地域住民のデータを分析し、両方のツールでリスクがあると判定された者では、どちらのツールでもリスクがないと判定された者と比較し、新たに要介護認定を受けるリスクが高いことを明らかにしました。両方のツールを併用することで、将来の要介護認定リスクが特に高い者を効果的に抽出できる可能性があります。研究成果は『日本公衆衛生雑誌』に掲載されました。

研究目的

 後期高齢者を対象とした健康診査(後期高齢者健診)では、多くの自治体において、後期高齢者の質問票を用いたフレイルのスクリーニングを行っており、後期高齢者の質問票のフレイル関連12項目において「健康リスクあり」の回答が4項目以上認められるとフレイルが疑われることになります。一方、介護保険による二次介護予防事業では基本チェックリストを用いて事業の対象者を抽出しており、二次介護予防事業の対象者は将来の要介護認定のリスクが高いことが知られています。しかし、両方のツールの判定を組み合わせた場合に要介護認定の発生リスクが特に高い者を抽出できるかについては、これまで検討されておりませんでした。そこで本研究では、後期高齢者の質問票によるフレイル疑いの有無と基本チェックリストによる二次予防事業対象の有無の組み合わせが、要介護認定の新規発生と関連するかを検討しました。

研究方法

 東京都千代田区から提供を受けた国保データベースと、同区の郵送調査(こころとからだのすこやかチェック)の回答データを連結し、後ろ向きコホート研究を実施しました。分析対象者は、2020年度に75歳以上で後期高齢者健診を受診し、かつ同年度の郵送調査に回答し、かつ健診受診時点で要介護認定がない者としました。後期高齢者の質問票のフレイル関連12項目のうち4項目以上に「健康リスクあり」の回答を認めた場合、「フレイル疑いあり」と定義しました。また、基本チェックリストの回答結果から、二次予防事業対象者の選定基準に従い、対象の有無を判定しました。健診受診日から2022年3月31日までを追跡期間とし、追跡期間における新規要介護認定発生をアウトカムとして、Cox比例ハザードモデルを用いて、フレイル疑いの有無と二次予防事業対象の有無の組み合わせと要介護認定の新規発生との関連について分析しました。

研究結果

 分析対象者は527人(平均年齢80.6歳、男性41.9%)で、追跡期間1,013.5人年の間における新規要介護認定者は50人(9.5%)でした。新規要介護認定の発生率(千人年あたり)は、フレイル疑いなし/二次予防事業なし群で33.1と最も低く、フレイル疑いあり/二次予防事業あり群で85.7と最も高くなりました。性別、年齢、居住状況、教育歴、既往歴で調整後、フレイル疑いあり/二次予防事業あり群では、フレイル疑いなし/二次予防事業なし群と比較して、新規要介護認定のリスクが2.55倍高いことが示されました(ハザード比:2.55、95%信頼区間:1.21-5.38)。

研究の意義

 後期高齢者健診では後期高齢者の質問票を用いてフレイルのスクリーニングを行い、フレイルが疑われる者に対してフレイルの進行予防・介護予防を目的とした保健事業を実施しています。一方、介護保険で実施している二次介護予防事業では介護予防を目的とした専門的な介入が実施されていますが、事業対象者の該当の可否を判断するためには基本チェックリストの実施が必要となります。本研究の結果から、後期高齢者健診で「後期高齢者の質問票」によりフレイル疑いと判定された者に対して「基本チェックリスト」を追加で実施することにより、新規要介護認定の発生リスクが特に高い後期高齢者をより効果的に抽出できることが期待されます。

掲載論文

和文タイトル:後期高齢者の質問票及び基本チェックリストにおける健康リスク者と新規要介護認定発生との関連
英文タイトル:Association between coexisting health risks identified by the Questionnaire for Medical Checkup of Old-Old and the Kihon Checklist and the onset of long-term care certification
著者:光武誠吾*、平田 匠*、杉山美香2*、稲垣宏樹2*
掲載誌:日本公衆衛生雑誌(J-STAGE 早期公開) DOI:10.11236/jph.25-10

所属
* 東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム
2* 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム

利益相反

 本研究は千代田区受託研究「高齢者の健康寿命延伸に資する事業検討に伴うデータ分析業務」の一部として実施しました。著者に開示すべき利益相反(COI)はありません。

プレス概要

(問い合わせ先)
東京都健康長寿医療センター研究所
福祉と生活ケア研究チーム(医療・介護システム研究)
平田匠・光武誠吾
電話:03-3964-3241