2026.3.9
● エクオール産生能を持つ高齢者は、「フレイルまたはプレフレイル」である割合が低かった(オッズ比0.71)。
● フレイルの構成要素のうち、特に「身体活動量の低下」は、エクオール産生能を持つ群で少なかった(オッズ比0.60)。
● 以上より、加齢とともに進行する骨密度低下や身体活動の減少に対し、エクオールの生理作用(エストロゲン様作用、抗炎症作用、血管機能改善作用等)が寄与している可能性が示唆された。
フレイルは、加齢に伴い心身の活力が低下した状態を指し、要介護状態や転倒、入院のリスクを高めることが知られています。日本では高齢者のおよそ1~2割がフレイル、さらに多くがその前段階であるプレフレイルに該当すると報告されています。東京都健康長寿医療センター研究所の小島成実研究員、笹井浩行研究副部長らの研究グループは、地域在住高齢者を対象に、腸内細菌による「エクオール産生能」とフレイルの関連を調べた研究を行い、エクオール産生能をもつ高齢者では、フレイル自体や、その構成要素である身体活動低下が少ない傾向があることを明らかにしました。
エクオールは大豆イソフラボンの一種であるダイゼインから、特定の腸内細菌が産生する代謝物です。誰もが産生できるわけではなく、産生できる人(エクオール産生者)は日本人高齢者では約半数とされています。
本研究は、板橋区在住の高齢者651人(平均年齢75.6歳)を対象とした観察研究であり、「板橋健康長寿縦断研究」における尿検査データを用いて解析しました。尿中エクオール濃度から産生能を評価し、フレイルおよびその構成要素との関連を解析したものです。
エクオールの産生は大豆食品の摂取だけでなく、産生を担う腸内細菌の存在に依存します。本研究は、腸内細菌の機能的特性が高齢者のフレイル予防に関与する可能性を示すものであり、腸内環境を整えることでフレイル予防の新たな介入戦略が得られる可能性があります。なお、本研究は観察研究であり、エクオール産生能が直接フレイルを予防する因果関係を示したものではありません。今後は介入研究等による検証が必要です。
日常生活においては、大豆食品の摂取や腸内環境を整える生活習慣(バランスの取れた食事、適度な運動等)が重要であると考えられます。
本研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の内部資金および日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C)の支援を受けて実施されました。
Kojima N , Shida T, Ohta T, Motokawa K, Okamura T, Hirano H, Sasai H. Association of Urinary Equol Concentration with Frailty in Community-Dwelling Older Adults: The Itabashi Longitudinal Study on Aging. Clin Interv Aging. 2026 Jan 21;21:1-8.
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