血液の細胞は白血球、赤血球と血小板に大きく分けられますが、骨髄の中で、造血幹細胞と呼ばれる「血液細胞の元になる細胞」から造られます(図1)。白血球は細菌などの感染症を防ぐ細胞、赤血球は酸素をすべての臓器、組織に運搬する細胞、血小板は出血を止める細胞です。
図1
造血幹細胞が様々な細胞に成長する過程の速い段階で細胞ががん化(白血病細胞)、骨髄中で増殖し、骨髄を埋め尽くします。その結果、正常な血液細胞が造られなくなり、出血、感染によって致命的な経過をたどります。大部分の急性白血病の原因は不明です。ここでは若年者より発症頻度の高い急性骨髄性白血病について御説明いたします。
がん化した白血病細胞が骨髄中で増殖すると正常な血液細胞が減少します。赤血球が減少すると貧血症状(ふらつきや息切れなど)、白血球(主に好中球)が減少し、感染症を合併すると発熱や咳嗽などが表れます。血小板減少による出血傾向が、主な症状となります。時には肝臓、脾臓、脳や髄膜、歯肉、皮膚などに白血病細胞が浸潤することがあります。
また、高齢者の急性骨髄性白血病は若年者白血病と異なり、前白血病状態である骨髄異形成症候群をへて急性骨髄性白血病に移行することが多いです。そのためまったく無症状で健診にて異常を指摘されることがあります。
血液検査と骨髄検査
急性白血病では多くの場合、採血で白血球数は高値となりますが(図2)、低値となることもあります。採血で血液細胞の異常が指摘され、白血病が疑われた場合には、骨髄穿刺で骨髄中での白血病細胞の増殖を確認することで診断します。また、骨髄穿刺では白血病細胞が20%以上診断だけでなく治療方法の選択に役立てるために、骨髄異形成症候群の有無、染色体検査、白血病細胞の性質を表す表面マーカー検査、必要に応じて遺伝子検査なども行います。骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病は多種類の型に分類されます。また、染色体検査では、若年者白血病と異なり、予後不良な染色体異常の出現頻度が高いといわれています。
図2
診断が確定すれば、入院のうえ、早急な治療が必要となります。ただし、高齢者の場合は各臓器障害の状態や全身状態によっては、積極的な抗がん剤使用が困難な方もおられます。その場合は、輸血等にて対症的な治療を選択する場合があります。
各臓器機能や全身状態を勘案し、抗がん剤使用が可能であれば、寛解導入療法を行い、完全寛解(顕微鏡検査で白血病細胞がみられなくなり、血球数が正常値となる状態で一般生活が可能な状態)を目指します。若年者と異なり副作用の強い抗がん剤の使用は困難な場合が多く、高齢者では副作用の少ない抗がん剤を併用することが多いです。完全寛解となっても体内に白血病細胞は残存しているので地固め療法や維持療法といった抗がん剤療法を繰り返し行います。残念ながら高齢者急性骨髄性白血病は若年者のそれと異なり、抗がん剤だけでは治癒に導くことができません。延命効果を期待することになりますが、途中で中止すると再発する可能性が高くなります。
一方、治癒を導く治療として、同種造血幹細胞移植がありますが、若年者と異なり一般的ではありません。条件が整えば、研究的に移植をおこなう施設もあります。