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髄膜腫は、脳を覆う髄膜から発生する腫瘍で、脳腫瘍の約30%超を占め、最も多いものとされています。
年間の発症率は10万人あたり約7-8例とされています。髄膜腫はゆっくりと成長することが多く、長期間無症状で経過することもありますが、腫瘍が大きくなると周囲の脳や神経を圧迫し、さまざまな症状を引き起こすことがあります。
約80%が良性ですが、15%が異型(細胞の構造異常や増えやすい特徴)を持ち、数%ですが悪性の髄膜腫も存在し、再発や急速な成長を示すことがあります。
髄膜腫の正確な原因は不明ですが、近年の研究で多くの遺伝子異常との関連が報告されています。
また放射線被曝やホルモンとの関連も指摘されており、やや女性に多く認められます。髄膜腫は、脳の外からできる腫瘍ですが、周囲の脳を圧迫することで症状を出します(図)。
図
よって腫瘍ができる場所や大きさにより多様な症状を引き起こします。
代表的な症状には、頭痛、手足の麻痺、感覚障害、けいれん発作、視力や聴力の低下、嗅覚の異常などがあります。
また、前頭葉に発生する場合には、性格の変化や判断力の低下、認知機能の低下などがみられることもあります。
症状が進行するにつれて、腫瘍が脳の他の部分や神経に影響を及ぼし、日常生活に支障をきたすことがあります。
髄膜腫の診断には、主に画像検査によります。
MRIやCT検査で、髄膜腫の存在を確認することができます。さらに造影剤を使用したMRIを行うことで髄膜腫をより正確に診断できるようになります。腫瘍の性質や血管との関係をより明確に評価するためにも重要な検査となります。
髄膜腫は脳を覆う膜(硬膜)から血流が流れている(栄養血管)ことが特徴です。手術をする場合には腫瘍と血管の関係や栄養血管の評価を行うためにカテーテル検査(脳血管撮影)を行うことがあります。
髄膜腫の治療は、腫瘍の大きさ、位置、症状の有無、などに応じて決定されます。
腫瘍が小さい、または無症状でみつかることも多く、そのような患者さんに対しては定期的な画像検査を行いながら経過観察を行うことが一般的です。
症状がある場合や腫瘍が大きい場合は、外科的な手術(腫瘍摘出)をおすすめします。腫瘍が大きくなることによって手術が困難になる場合にも手術をおすすめすることがあります。また、腫瘍の大きさにもよりますが、放射線治療(定位放射線治療)により腫瘍の制御を行う方法も選択肢となります。
手術は腫瘍の完全摘出を目指しますが、腫瘍が脳神経や重要な血管に近接している場合、あるいはこられとくっついている場合(癒着)、完全な摘出が難しいことがあります。その場合は残った腫瘍に対して放射線治療を追加で行うことがあります。また、悪性髄膜腫に対しては放射線治療の追加が一般的です。
現在、多くの治験も進行中ですが、髄膜腫に対する化学療法(内科的治療)は確立されたものはありません。上記の選択肢を踏まえて、当院では患者さんの状態に併せて適切な治療方針をご提案いたします。髄膜腫をご指摘された場合には一度受診されることをおすすめいたします。
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