膵臓のβ(ベータ)細胞から出る血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌が悪くなる、また、効きが悪くなることにより慢性に血糖値が高くなる病気です。神経、眼、腎臓、足、脳、心臓などの臓器の血管が傷むことにより、さまざまな合併症を引き起こします。
食事や運動、薬などによって継続的な治療ができれば糖尿病のない人とかわらない寿命を全うできます。
糖尿病は早期の受診が大切です。健康診断や採血検査で血糖値が高いと言われたら、なるべく早く近くのクリニックや病院を受診しましょう。
多くは2型糖尿病であり、インスリンの分泌が悪い、もしくは効きが悪いといった遺伝的な背景に、食事量が増えたり、運動量が減るという環境要素が加わって発症します。一方、1型糖尿病は、β細胞が破壊されることによりインスリンが不足するものです。
血糖値が非常に高くなると、のどが渇き、水分を飲む量が増え、尿の量が増えます。しかし、少し高いだけでは無症状のことも多いので注意が必要です。長期に高血糖状態が続くと体の様々な血管が傷みます。足がしびれたり(神経障害)、視力が低下したり(網膜症)、むくみが出たりします(腎症)。これらを3大合併症といいます。
動脈硬化も起こりやすく、心臓、脳の血管が詰まることによって起きる心筋梗塞や脳梗塞、足の血管が詰まることによって起きる下肢閉塞性動脈疾患(歩行時の足の痛みや壊疽など)の危険が高まります。足をよく観察しましょう。
糖尿病では、認知症や歯周病にもなりやすく、脂肪肝も多くみられます。
糖尿病の状態や原因を調べる検査と合併症を調べる検査があります。
体重やBMI、ウェスト径は糖尿病の管理に重要です。HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、過去1,2か月の平均的な血糖の状態を反映する血液検査です。血液検査ではインスリンの分泌能評価や1型糖尿病の検査(抗GAD抗体など)も行えます。糖尿病では高血圧や脂質異常症を伴っている人が多く、これらの評価も大切です。
合併症の検査には、尿中アルブミン検査(腎症)、眼底検査(網膜症)、 腱反射(神経障害)などがあります。動脈硬化の検査には、心電図のほか脚の血管の硬さや詰まりを調べる脈波検査や頸部の血管エコー検査があります。脂肪肝は腹部エコーで評価します。
食事療法、運動療法、薬物療法の3つからなります。
食事療法は、必要なエネルギー量を、炭水化物、タンパク質、脂質を適切な割合で摂取することを指します。栄養指導を受けましょう。
運動療法も重要です。散歩などの有酸素運動はインスリンの効きを改善します、スクワットなどのレジスタンス運動は筋肉の量を増やします。片足立位保持などのバランス運動は転倒予防につながります。
薬物療法は、患者様の状態に合わせて、飲み薬や、注射製剤が選択されます。最近GLP-1受容体作動薬などの新しい注射薬も登場しています。
1型糖尿病や、2型でもインスリンの分泌が特に少ない方にはインスリンそのものを補います。薬物療法にあたっては、低血糖に注意する必要があります。
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