糖尿病性腎臓病(糖尿病性腎症)

代表的な症状

糖尿病があってアルブミン尿や腎臓の働きが悪いといわれた

疾患概要

糖尿病性腎症は糖尿病三大合併症(網膜症、腎症、末梢神経障害)の一つです。糖尿病の初期の段階ではほとんど自覚症状がありませんが、高血糖状態が持続すると約10~20年ほどの経過でアルブミン尿がみられ糖尿病性腎症を発症します。腎機能低下がみられ末期腎不全となり、透析療法が必要になることがあります。糖尿病性腎症は新規透析導入の原因としては最も多い約4割を占めており、早期発見と適切な治療が大切です。
アルブミン尿がみられずに腎機能が低下する非典型例もしばしばみられ、糖尿病性腎症とあわせて糖尿病性腎臓病と呼んでいます。

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原因・症状

高血糖状態が持続するとからだの中の小さな血管が傷み、血管が詰まったり破れたりして障害を受けます。腎臓には糸球体という血液をろ過するための装置が約100万個あり、体内の老廃物をろ過し尿として排泄しています。糸球体には細小血管が張り巡らされているため、高血糖による血管障害が起こりやすくなっています。

糖尿病性腎症は初めのうちは自覚症状がありませんが、発症すると尿タンパク(アルブミン)が出現し、進行するとむくみやだるさ、貧血などの症状が現れるようになります。さらに症状が進行すると腎臓で尿を作ることができなくなり、最終的には透析療法が必要となります。

検査

糖尿病性腎症の検査には、尿検査と血液検査があります。尿検査では尿中のアルブミンやタンパク質を測定することで糸球体の傷害がどの程度進行しているのかを調べることができます。尿中のアルブミンはごく少量であっても検出が可能であり、早期に糖尿病性腎症と診断されます。また、血液検査ではクレアチニンから推算したGFR(糸球体濾過量)をみることで腎機能を評価し、これらから糖尿病腎症の病期分類(表1)を判定します。

表1. 糖尿病性腎症病期分類2023

尿アルブミン・クレアチニン比(UACR, mg/g)
あるいは
尿蛋白・クレアチニン比(UPCR,g/g)

推算糸球体ろ過量(eGFR,mL/min/1.73m2

第1期(正常アルブミン尿期)

正常アルブミン尿(30未満)

30以上

第2期(微量アルブミン尿期)

微量アルブミン尿(30~299)

30以上

第3期(顕性アルブミン尿期)

顕性アルブミン尿(300以上)
あるいは
持続性タンパク尿(0.5以上)

30以上

第4期(GFR高度低下・末期腎不全期)

問わない

30未満

第5期(腎代替療法期)

透析療法中あるいは腎移植後

(日腎会誌 2023;65(7):847-856.より一部改変)

治療

治療の基本となるのは血糖コントロールです。食事や運動に加えて、血糖を下げる薬やインスリンを使用し、主治医の指導のもと適切な血糖管理を行います。高血圧やコレステロール異常がある人はあわせてそれに対する治療を行い、そのほか食事療法、運動療法、生活習慣の改善を行うことも大切です。食事については腎症の程度によって注意すべきポイントが異なるため、栄養士による栄養指導をおすすめします。

腎臓の機能が著しく低下し末期腎不全に至った場合は、人工的に腎臓の機能を補う透析療法を行います。

糖尿病性腎症は、早期発見と適切な治療により悪化を防ぐことが期待できる病態です。糖尿病を指摘されたら定期的な受診や生活習慣の改善、腎症を含めた合併症のチェックを行うようにしましょう。

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