脂質異常症とは、血液中の中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールが一定の基準値より高い状態、またはHDL(善玉)コレステロールが一定の基準値より低い状態を指します。
LDLコレステロールは肝臓からコレステロールを全身に運ぶ役割を、HDLコレステロールは体内や血管内の余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割を担っています(図1)。
血管内に悪玉コレステロールが多く、善玉が少ないと動脈壁にコレステロールが沈着し、さまざまな動脈硬化性疾患(血管が狭くなったり詰まる病気)を引き起こします。
中性脂肪が高いことも動脈硬化に関連することがわかっています。
図1
原因として、生活習慣(過食、お酒の飲みすぎ、運動不足など)によるもの、遺伝によるもの(家族性高コレステロール血症など)、他の病気や薬による影響(糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、ステロイドなど)が挙げられます。
通常、自覚症状はありませんが、放置しておくと動脈硬化が進行し、脳梗塞、心筋梗塞、下肢動脈閉塞といった病気を引き起こす危険が高くなります。
血液検査で中性脂肪(TG, トリグリセライド)、LDLコレステロール、HDLコレステロールを測定し、診断をします。
non(ノン)-HDLコレステロールは総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値であり、LDLコレステロール以外にも存在する悪玉コレステロールもすべて含む指標です。(表:脂質異常症の診断基準)。
表:脂質異常症の診断基準
出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 日本動脈硬化学会, 2022
動脈硬化の検査としては、心電図(心臓の血のめぐりを評価する)のほか、脈波検査(脚の血管の方さや詰まりを調べる)や、頚動脈エコー(頚の血管の方さや詰まりを調べる)などがあります。中性脂肪が高い方には脂肪肝も多く、エコーでわかります。
これらの検査を定期的に受けることをお勧めします。
生活習慣の改善が重要となります。
上記の「予防」にあげた生活習慣の改善に加えて、必要によりお薬を使います。
スタチン薬は、LDLコレステロールを下げるのに有効です。
糖尿病があったり、以前に心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある方については、再発予防のために、より厳しくLDLコレステロールを下げることが勧められています。
フィブラート薬は、中性脂肪を下げるのに有効なお薬です。