パーキンソン病とは、脳の「黒質」とよばれる細胞が少なくなり、「ドパミン」が少なくなる神経変性疾患です。
現段階では不明ですが、遺伝子異常の関与や、環境因子が影響することも知られます。
3大症状は、静止時振戦、筋強剛(筋固縮)、運動緩慢・無動です。近年では、運動症状のみならず、精神症状などの非運動症状も呈します。発症年齢は50~65歳に多く、高齢になるほど発病率が増加することが知られます。
問診が重要です。問診で同疾患を疑われたら、外来および入院で精査します。診察に加え、画像診断(CTやMRI)、核医学検査(MIBG心筋シンチグラフィー、脳ドーパミントランスポーターシンチなど)、神経心理検査、血液検査、尿検査、髄液検査、薬物反応検査などを行います。これらの結果を診断基準と照らし合わせ、総合的に判断します。
治療の主体は薬物療法で、最も有効です。多くの種類の薬物が知られ、症状の多くは改善が期待できます。
薬物の種類 |
作用機序 |
---|---|
L-dopa製剤 |
ドパミンを補充 |
ドーパミンアゴニスト |
ドパミン受容体を刺激 |
MAO阻害剤 |
ドパミンの分解を阻害 |
COMT阻害剤 |
ドパミンの分解を阻害 |
抗コリン薬 |
相対的に過剰なアセチルコリンをブロック |
ノルアドレナリン作動薬 |
ノルアドレナリン受容体を刺激 |
ドパミン放出促進剤 |
ドパミンの放出を促進 |
薬物療法の限界として、治療薬の中心であるL-dopa製剤は、長く服用していると効果が不安定となり、ウェアリングオフ(お薬がすぐ切れる)、ジスキネジア(体がくねくね動いてしまう)などが出現することがあります。そのために、薬物調整が難しくなってくることがあります。
治療は薬物療法だけではなく、リハビリテーションも重要になります。病気の進み方は個人差がありますが、早めに適切な薬物治療を受けて、規則正しい生活(薬のきちんとした服用、積極的なリハビリテーション)を送ることが大切です。
薬物療法での治療限界の場合、外科的治療を検討する場合があります。外科的治療には、「破壊術」と「刺激術」がありますが、より侵襲が少なく、可逆的(刺激を中止することができるという意味で)である刺激術(脳深部刺激術)が主流となっています。
研究段階ですが、反復経頭蓋磁気刺激療法、移植療法、遺伝子治療、細胞療法、細胞保護療法など知られます。これらは、安全性や有効性については十分な検討が必要です。
進行性の疾患です。個人差はありますが、臥床(がしょう)(ベッドなどに横になること)生活となってからの合併症に生命予後は左右され、誤嚥性肺炎などの感染症が直接死因になることが多いとされます。高齢者では、脱水、栄養障害、悪性症候群に陥りやすいので注意が必要です。平均余命は一般の方より2~3年短い程度とされます。
患者さん本人はもちろん、ご家族にとっても負担が大きいのです。まずは脳神経内科で正しい診断および治療を受けましょう。
脳神経内科では、神経変性疾患であるパーキンソン病関連疾患(パーキンソン病、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底変性症、脳血管性パーキンソン症候群、薬剤性パーキンソン症候群など)の患者さんを積極的に受け入れており、診断および治療をおこなっています。進行期でも、誤嚥性肺炎や尿路感染などの合併症にいたるまで、積極的に診療しています。地域の近医や多職種の方々と連携し、社会的環境調整や介護サービス利用のサポートなどを行い、適切な療養環境を整えることを目指しています。
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