突然、足からふくらはぎが赤くなり、熱を持って腫れてきた。
皮膚の皮下脂肪組織を中心とした細菌感染症です。主な原因菌は黄色ブドウ球菌です。
免疫力が低下している時に皮膚の細かな傷などから原因菌が侵入して皮下脂肪組織を主体として感染が拡大します。
主要症状は下腿から足背にかけての熱感を伴う瀰漫(びまん)性紅斑で、腫脹と疼痛を伴います(図)。
図 下肢蜂窩織炎の臨床像
足ではなく、手から腕にかけて同様の症状がみられる上肢の蜂窩織炎も少なくないです。
38℃以上の発熱や倦怠感、食欲低下といった全身症状がみられることも多く、感染菌が血液循環に侵入して全身感染の状態(悪寒戦慄などを示す)となる菌血症の併発も稀ならず認められます。
近縁疾患の丹毒は顔面の境界明瞭な発赤・腫脹としてみられることが多く、皮膚の真皮を主体とした感染が主に溶血連鎖球菌を原因菌として発症します。
一方、重症病型の壊死性筋膜炎は蜂窩織炎と同様の発赤・腫脹する紅斑として発症しますが、より深部の浅在筋膜を主体とした感染症のために、次第に黒色の壊死性変化を伴うもので、主な原因菌はA群β溶血性レンサ球菌,黄色ブドウ球菌、嫌気性菌、Vibrio vulnificusなどです。
一般の採血検査(含む血糖値)により炎症反応(白血球数やCRP値の高値、白血球分画で核の左方移動)や肝腎機能障害、電解質異常、脱水などがみられるか確認します。
菌血症の併発が疑われる症例では血液培養検査を行います。壊死性筋膜炎との鑑別を要する症例ではX線やCT・MRIといった画像検査が行われる場合があります。
治療では抗生物質の全身投与を行います。第1世代セフェム系あるいはβ-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系など内服や入院での点滴治療を行います。
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